自営業の老後対策…意外と知らないお得な制度
同書には、さまざまな自営業者や専門家に話を聞き、上田さんが「お金を整える」までが描かれている。そこで、取材を通して学び、実践した老後対策を教えてもらった。
【確定拠出年金(個人型)】
国民年金や厚生年金などの公的年金とは別にお金を積み立てる“私的年金”。掛け金は5000円から6万8000円(国民年金基金と併用する場合は合わせて上限6万8000円)。受け取りは60歳以降だが、掛け金の所得控除、運用益非課税などの税制優遇がある。
【小規模企業共済】
自営業者が自ら退職金を準備する共済制度で、加入資格は従業員20人以下の個人事業主。1000円から7万円の掛け金をかけ、廃業時にはそれまでに積み立てた金額に1~1.5%ほどの金利がつく(例:上限の7万円を30年間かけ続ければ、廃業時の受取額は約3000万円となる)。
ちなみに、確定拠出年金や小規模企業共済は国の制度なので、所得が控除されて節税対策にもなるという。年金の専門家の田中章二氏は、同書で「公的なものを目一杯利用したうえで薄いところを民間の保険でフォローします。気になるところを掛け捨てでかける」と勧めている。
「仮にお得な年金制度があっても、国は教えてくれないんですよね。本をつくる前の私のように、『どうせ少ししかもらえない』と思って、国民年金を納付せずに民間の個人年金や生命保険に入っているという人もいるかもしれません。確定拠出年金や小規模企業共済は、老後対策として基礎の基礎なので、ほかにもお得な情報はたくさんあると思います」(上田さん)
自営業は、業務も経理もすべて自分が担当する。定期的に税制や年金の専門書を購入し、勉強会に参加するなど率先して学び続けなければ、大きな損をしてしまうという。
90歳までの「生涯収支」を出せば老後が見える
自営業者には、日々の仕事に追われ、お金のことを考える余裕がない人も多い。そうした生活を送っているうちに、「いざ仕事がなくなると、どうしたらいいのかわからなくなってしまった」と上田さんは語る。彼女のように、「とにかく将来が不安」という人は、一度「生涯収支」を算出すべきだという。
「生涯収支の出し方は、公認会計士・林總(はやし・あつむ)先生のレクチャーによるものです。現在から90歳までのお金の流れを、その年ごとに書き出して把握する。これからの人生で起きる、結婚や出産、趣味などのイベントに『いくらかけたいか』を自分で決め、その金額を予測することで、老後に必要な金額も見えてくるんです」(飛田さん)
『マンガ 自営業の老後』 フリーランスが、死ぬまで幸せに生きるために、いま、できることのすべて みんなが苦手な年金や税金の話を超絶わかりやすく体感できる実用コミックエッセイ。老後貧困に陥らないために、そして、死ぬまで黒字でいるために何をすればいいのか。53歳 超ずぼらイラストレーターが、専門家と先輩の力を借りて、ギリギリセーフで老後の備えを始めます。