安倍政権の「キャッシュレス決済比率4割」政策への違和感…消費者が享受する「メリット」
日本中が“キャッシュレス音頭”を踊っている。
現金決済は時代遅れ、紙幣や硬貨で支払うのはカッコ悪いし迷惑、外国ではキャッシュレスがスタンダードなのにインバウンドに対応していない、日本はグローバル比較では決済後進国だ――と、あらゆるメディアで容赦ない言われようだ。
さらに、銀行はコストがかかるATMを減らす方向に向かっているし、人手不足のコンビニエンスストアや外食産業がどんどんキャッシュレス型の店舗に乗り出す、との報道もある。こう聞くと、推進派の一定の理屈はわかるし、時代の流れにも沿っている気がする。もちろん、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据え、外国人観光客の利便性を図る必要もあるだろう。
しかし、「2027年までにキャッシュレス決済比率を4割まで上げるぞ」と国が大号令を発するのを見ていると、奇妙な感覚に襲われる。何をどう支払おうと消費者の勝手ではないか、と思うのだ。
本当に、私たちにとってメリットばかりなのか。キャッシュレス音頭の輪に加わる前に、それを考えてみたい。
たこ焼き屋さんも現金払いが許されない時代に?
政府の資料によれば、そもそもキャッシュレス化が俎上に載せられたのは「『日本再興戦略』改訂 2014」の場で、その後も検討の場を変えつつ議論は進み、2017年に閣議決定された「未来投資戦略2017」では、10年後(2027年)までにキャッシュレス決済比率を4割程度とすることがKPI(重要な評価指標)とされている。
なぜキャッシュレスを目指すかについては、「実店舗等の無人化省力化、不透明な現金資産の見える化、流動性向上と、不透明な現金流通の抑止による税収向上につながると共に、さらには支払データの利活用による消費の利便性向上や消費の活性化等、国力強化につながる様々なメリットが期待される」と書いてある(平成30年4月「キャッシュレス・ビジョン」経済産業省より)。
店舗の無人化省力化はいいとして、次の文言の意味は、データが残れば販売数や金額が明確になるので売り上げのごまかしができなくなり、「税収向上につながる」という話だろう。
以前、大阪城公園で長年営業していたたこ焼き屋さんが約1億3000万円の脱税の罪に問われたというニュースが流れたが、もし、たこ焼きを買うのに店が現金払いではなくアプリ決済を導入していたら、売り上げデータもごまかしようがなかっただろう。今どきは、企業の財務データもクラウドで管理することができる。入力した数字がそのまま帳簿に反映されるというのは誠に便利だが、おかげで悪さをできる余地がない。
これだけでも、「キャッシュレスは便利ですよ、ぜひやりましょうよ」と国は言いたくなることだろう。
キャッシュレスで消費が活性化する?
正しい納税が増えるのは良いこととして、私たち消費者にとっては何が起きるのだろうか。先ほどの文言に続く「支払データの利活用による消費の利便性向上や消費の活性化等」を深読みしたい。
その前提として、キャッシュレスの手段について整理しよう。さまざまな分類があるが、リアル(実物)カードがある決済手段は以下が代表的だ。
・クレジットカードやデビットカード(決済は銀行口座からの引き落とし)
・電子マネーやプリペイドカード(原則としてチャージが必要)
そして、最近勢いを増しているのがスマートフォンによる決済アプリだ。店頭で支払いに使う場合は、以下の2つの方式となる。
・専用リーダーにかざす非接触型(アップルペイ、グーグルペイ、各種電子マネーなど)
・コード読み取り、もしくは提示型(LINE Pay、楽天ペイ、Origami Pay、d払いなど)
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