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松崎のり子「誰が貯めに金は成る」

安倍政権の「キャッシュレス決済比率4割」政策への違和感…消費者が享受する「メリット」

文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

 このように、「データを一気に収集・分析・活用する」ためには、現金ではなく、購入データが確実に残るキャッシュレス決済が不可欠なのだ。そして、私たちに「個別のニーズにきめ細かく、かつリアルタイムで対応」してくれるつもりなのだろう。

マイナンバーカードの機能もスマホに集約か

 アプリやカード払いによるキャッシュレス化で「購入履歴がわかりやすくなるので家計管理が楽になる」という声があるのも事実だ。あるフィンテック企業の勉強会で、家計のお金の流れが明快になれば資産形成に回せる余裕がどの程度あるかがわかる、という話も聞いた。スマホの自動家計簿アプリがロボアドバイザーなどによる資産形成アプリと連携しやすいのも、そういう狙いがあるのだろう。消費喚起だけでなく、貯蓄から投資への後押しをしたい官庁にとっては、それも願ったり叶ったりというところだ。

 この先、現金派はどんどん肩身が狭くなっていきそうだ。政府がキャッシュレス決済を導入する中小の小売店に対して税制優遇を検討する、との報道も出ている。ますます「現金お断り」の店が増えてくるかもしれない。

 そして、いつかは出るなと思っていた“マイナンバーカードの機能のスマホへの搭載”にも、「必要な安全確保措置を踏まえて検討を行う」と政府は言及している。せっかくマイナンバーカードを利用したポイント制度もつくったことだし、こんなことも考えているようだ。

「マイナンバーカードを活用したクラウド型決済インフラとして実証稼動中の自治体ポイントの仕組みを利用し、地域のキャッシュレス化を伴う新たな地域活性化策の検討を進める」(「未来投資戦略2018」より)

 具体的な中身はよくわからないが、いつかはマイナンバーカードの機能がスマホに搭載され、ポイントも使えてキャッシュレスで買い物もできるようにします、となれば、より多くの個人データが蓄積されていくことだろう。それが、住民サービスに適正に使われると思いたいが。

 10月1日の日本経済新聞が、2019年の消費増税ショックをやわらげる対策として、中小の小売店でキャッシュレス決済を選んだ客に購入額の2%をポイント還元するという施策を政府が検討中、と報じた。このように、政府が本気を出せば出すほど、キャッシュレス化の波はひたひたと押し寄せてくることだろう。しかし、最初に書いたように、どうも違和感というか妙な感じが拭えないのはなぜだろう。

 今さら監視社会だなんて野暮は言わないが、現金払いができるたこ焼き屋さんも少しは残っていてほしいと、昭和生まれの人間はぼんやり思ってしまうのだ。
(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

消費経済ジャーナリスト。生活情報誌等の雑誌編集者として20年以上、マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析した経験から、貯蓄成功のポイントは貯め方よりお金の使い方にあるとの視点で、貯蓄・節約アドバイスを行う。また、節約愛好家「激★やす子」のペンネームでも活躍中。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)。
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