話題の就業不能保険、早急な加入に待った?まずは公的な傷病手当金や障害年金を要チェック
私が保険を販売する際には、会社員の人にはこの話を必ずするのですが、この傷病手当金については、知らない人がほとんどです。
一方、自営業やフリーランスの人が加入している国民健康保険には、残念ながらこの制度はありません。健康保険には、窓口の支払いが3割で済む「療養の給付」と、月々の療養費に上限を設けている「高額療養費制度」、それに「傷病手当金」の3つの柱がありますが、国民健康保険には先の2つしかないのです。
この傷病手当金の支給状況ですが、20代から40代半ばくらいまでは、精神および行動の障害によるものが4割を超えています。つまり、働けなくなることの原因が、精神に障害を来したことによるものが多いということです。
障害年金や労災の補償もあります
もう一つの公的な保障としては、障害年金があります。病気やけがが原因で、障害を負ったときには、障害が続く限り障害年金が一生涯支払われます。これもあまり身近に感じることがない年金保険の保障です。
こちらも、自営業者は障害基礎年金のみ、会社員は障害厚生年金と障害基礎年金の2階建てで保障が手厚くなっています。あと、会社員が仕事が原因の病気やけがで働けなくなったときには、労災保険(労働者災害補償保険)があり、休業補償の給付のほか、障害補償年金、遺族補償年金に、介護補償などまで備わっています。
就業不能保険は、会社員より自営業者が考えるべき保険
さて、こうした公的保障内容を踏まえた上で、就業不能保険が必要なのかどうかを考えることになりますが、どうやら必要がありそうなのは、自営業やフリーランスの人ではないかと思います。実際、ライフネット生命の契約者は、医師などの自営業者が多いと聞きました。
入院したらせいぜい数十万円が支払われるだけの「医療保険」に加入している人は多いと思いますが、同じ保険料を支払うのであれば、「就業不能保険」のように、起こってしまうと大ごとになる事態に備えておくほうが理にかなっていますし、大きな出費のために備えるという生命保険本来の目的に合致しているかと思います。
どうしても就業不能保険を検討したい会社員は
一方、会社員にとっては、この保険は、さほど必要性の高いものとも思えません。それでも、特に働き盛りの人は、家族のことやら、住宅ローンのことやらが心配になるという人もいるでしょう。そうした人への、私なりのアドバイスとしては、
(1)会社の福利厚生規程をこの機会に調べる
傷病手当金のほかに、会社はどこまで面倒を見てくれるのかを調べてください。企業規模が大きくなると、意外と休業期間にも一定の給与が支払われる会社は多いです。
(2)住宅ローンが疾病保障付き団体信用生命保険(団信)になっていないか確認する
三大疾病などになったときに、ローンがなくなる団信も増えています。保障は、あればあるほど安心でしょうが、費用負担を考えると、保障が重複するのは避けたいものです。
(3)勤め先で、先の団体長期障害所得補償保険(GLTD)に加入できないかを調べる
所属する団体で、従来からある所得補償保険やGLTDに加入できるのであれば、そちらからまず検討してみましょう。団体割引のほか、事故が少なければ優良割引があり、企業によっては、8割超の大幅割引の保険料になっているところもあります。
保険というのは、“勧める”のも“勧めない”のも難しい商品ですが、急にテレビCMを見たからといって、今までに必要を感じていなかったものにまで保険料を支払うのは避けたいものです。
(文=藤井泰輔/ファイナンシャル・アソシエイツ代表)