高齢の親が詐欺に遭って遺産ゼロに…防げるかどうかは、子ども=あなた次第です
特殊詐欺の手口が巧妙化しており、その被害が絶えません。被害額は全国的に減少しているようですが、それでも2017年の1年間で約400億円もの金額が特殊詐欺により騙し取られています。一日当たり約1.1億円にも上るわけですが、特殊詐欺を働くグループは年末年始、ゴールデンウィーク、お盆は活動を控えるといわれます。これらの期間は子どもが里帰りしていることが多いため、あえて活動を控えると専門家に伺ったことがあります。
筆者の母が一人で暮らす実家にも「オレオレ詐欺」の電話が、筆者の名前を騙りかかってきたことが数回あります。父が亡くなってから頻繁に電話をしたり、週1回買い物へ連れて行くなどしていたため、母は声が違うことがすぐわかり電話を切ったので、事なきを得ました。
筆者は仕事柄、特殊詐欺から資産を守るためのイベントなどに仕事でかかわらせていただくことがありますが、特殊詐欺に引っかかってしまった場合、取られたお金が戻ることはほとんどないそうです。
今回、注意を促したいのが、現役世代の方々です。年齢でいえば50代が中心になると思われます。ストレートにいえば、この年代になると万一両親が亡くなった場合、相続税がかかるのかどうかを考えるのと同時に、遺産をどのくらいもらえるのかを皮算用する人もいるはずです。生前贈与を期待したいかもしれませんが、相続についてしっかり考えてくれる両親でないと、なかなか難しいようです。
では、相続が発生する前にその資産が特殊詐欺で取られてしまったら、どうでしょうか。将来相続で受け取れるはずの遺産がなくなり、泣くに泣けないことでしょう。場合によっては、「何で騙されるんだ」「息子(娘)の声がわからなかったのか」など、両親を怒ってしまうかもしれません。
ここで注意すべきは、親が特殊詐欺に遭わないようにするためには、子どもがしっかりしなければならない、ということです。特殊詐欺を防ぐためのイベントの対象者は主に高齢者ですが、そうした方々は自身のことを高齢とは思っていなかったり、自分は騙されることはないと思っている人が多いのです。それでも特殊詐欺があとを絶たないのですから、高齢者に注意喚起を行っていても、その効果はたかが知れていると思われるのです。将来、遺産を受け取る側の人たち、つまり現役世代の人たちに注意を促す必要があるのです。
みなさんの親が特殊詐欺の被害に遭うかもしれないのです。それを防ぐためには、常日頃から親と連絡を密にとる、電話の場合は合い言葉をつくっておく、特殊詐欺の電話を排除する電話に交換するなど、未然に防ぐ方法はあるのです。相続財産の消滅を避けるために、日頃親と疎遠にしている人は、今から、あるいは年末年始などに帰省したときに親ときちんと話をしておくことが第一歩なのです。
簡単にいえば、日頃親を放って疎遠にしているのにもかかわらず、遺産を受け取ろうなんて“虫が良すぎる”というわけです。
(文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー)