世界でも稀な日本の医療保険、支払う保険料「100万円」はまったく割に合わない
こうした医療保険は、米国や欧州にはない日本独特の商品です。ここまで医療保険が日本で浸透した理由を考えてみますと、テレビや新聞を通してさんざん目にする広告宣伝によって、みなさんが医療費の負担に対して漠然とした不安を持ってしまっているからではないでしょうか。その不安が払拭され、医療保険の役割をしっかりと認識することで、医療保険の必要性に関して、みなさんなりの整理ができると思います。
医療保険という高額商品を購入する前に、みなさんにぜひとも知っておいてほしい点は、次の3つです。
1.医療費の負担には上限があります
日本は国民皆保険制度で、みなさんはなんらかの健康保険に加入し、その証として「健康保険被保険者証(保険証)」を持っています。それがあることで受けられる保障の内容は、(1)窓口での3割負担、(2)高額療養費制度、(3)傷病手当金です。(3)については、前々回の就業不能保険のところでお話ししました。今回のポイントは、(1)と(2)です。
医療費は決して安くありませんが、みなさんが病院やクリニックで治療を受けて、会計の窓口で支払うのは、実際の治療費の3割です。これは、処方された薬代も同じです。そして、入院や手術をして、3割負担の医療費すら高額になったときには、月々の負担の上限があり、その額は給与などの所得によって決まっています。年収が370万円以下であれば、おおよそ6万円、年収が770万円以下ならば、9万円です。しかも、負担が上限額に達した月が3カ月以上になると、上限額はそれまでよりも下がる制度になっています。つまり、健康保険のお陰で、医療費の負担が際限なく大きくなることはないのです。
2.医療保険からの支払いには限度があります
一方、民間の医療保険には、一般的に支払額に限度があります。最近の医療保険は、1回の入院日数の制限が60日のものが主流です。それは、保険会社にいわせると、入院日数が少なくなってきているからということです。
したがって、どんなに重い病気やけがで、どんなに長く入院しても、医療保険から支払われる額は、日額5,000円の医療保険であれば、5,000円☓60日=30万円と、手術をすれば手術給付金が支払われるだけだということです。
3.医療保険から得られる効用は保険料にまったく見合わない
保険とは、そもそも起こってしまうと大きなお金が必要になることに備えるのが本来の目的です。死亡保険であれば、まさかのときに支払われるお金(保険金)は、1,000万円単位になることも珍しくありません。一方、医療保険は先の例のようにせいぜい数十万円です。
保険は損得勘定だけでその必要性を考えるものではありませんが、医療保険から支払われる給付金は、みなさんが生涯に2カ月以上にも及ぶ入院を2、3回して、やっと支払う保険料に見合うということです。そして、支払った保険料に見合うわずかばかりの効用を医療保険から得られる人は、本当にごく一部の人だということです。
これらの点は、みなさんが医療保険という高額商品の購入を考える際には、ぜひ頭に入れておいてください。しなくてもいい不安を抱いたり、テレビCMや新聞広告に踊らされたりしていては、家計は一向に楽になりません。
(文=藤井泰輔/ファイナンシャル・アソシエイツ代表)