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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

同じ高齢者を何度も食い物に…リフォームの訪問販売被害、なぜ再び急増?点検商法も

文=山下和之/住宅ジャーナリスト
同じ高齢者を何度も食い物に…リフォームの訪問販売被害、なぜ再び急増?点検商法もの画像1
「gettyimages」より

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあって、2020年度には新築住宅やリフォームに関する相談、トラブルが減少したものの、2021年度には再び増加する傾向が明らかになっています。特に、リフォームに関する訪問販売のトラブルが増えているので、注意が肝心です。

相談件数が2割以上も増加している

 公益財団法人の住宅リフォーム・紛争処理支援センターでは、消費者の利益保護や住宅紛争処理の迅速、適正な解決を図るため、「住まいるダイヤル」を通して、住宅相談、住宅紛争処理への支援などの活動を行っています。その結果を、毎年『住宅相談統計年報』としてまとめていますが、このほどその2021年度分の結果が報告されました。

 それによると、2020年度には新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあって、相談件数が減少したものの、2021年度には再び増加に転じています。図表にあるように、全体としては2020年度の2万9069件から2021年度は3万5040件と20.5%の増加となりました。新築住宅などに関する相談、リフォームに関する相談ともに同じように増えています。

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soudan_web2022.pdf (chord.or.jp)

持家の一戸建てに関する相談が多い

 この相談件数、どのような住宅に多いのかをみると、住宅の形式としては全体の76.9%が戸建住宅で、23.1%がマンションなどの共同住宅等になっています。4件中3件までが一戸建て住宅に関する相談であり、これは住宅に関する相談、リフォームに関する相談ともに共通しています。

 次に住宅の利用形態では、全体としては89.6%が持家であり、賃貸は10.6%となっています。賃貸なら、問題があれば引っ越しなどがそんなに難しくありませんが、持家ではそうもいきません。問題が起これば、何とかしたいと考える人が多く、相談件数が増えるのでしょう。

 住宅の構造別では一戸建てが中心ですから、構造的には木造がほぼ7割を占め、RC造(鉄筋コンクリート造)が2割で、S造(鉄骨造)が1割といった構成でした。つまるところ住宅に関する相談にしろ、リフォームに関する相談にしろ、持家の木造一戸建てに関する相談が多くを占めているということです。これから購入を考えている人は、念頭に入れておきたい点です。

トラブルの相手方は施工業者が8割に

 住宅に関する相談内容をみると、住宅のトラブルに関する相談が8割で、トラブルの相手方としては、「新築時の施工業者」が59.9%、「不動産業者」が26.3%などとなっています。リフォームについての相談では、「リフォーム業者」が93.6%を占めています。

 トラブルの解決希望内容としては、住宅に関する相談では「修補」が55.6%、「損害賠償」が11.5%、「修補と損害賠償」が7.0%などとなっています。リフォームに関しては、「修補」が40.1%で、「損害賠償」が14.1%、「契約解消」が11.9%などとなっています。リフォームにおいては、「契約解消」が比較的大きな比重を占めていますが、これは、リフォームの訪問販売など、強引な商法で契約してしまった人が後を絶たないからではないでしょうか。

訪問販売によるリフォームのトラブルが増加している

 ひところ、リフォームに関する強引な訪問販売が大きな社会問題となりました。特に、高齢者だけの世帯や単独世帯を対象にする悪質な商法が横行しました。なかには、一度被害に遇った世帯を対象に、二度目、三度目の訪問販売を行って、結果、何千万円もの契約を結ばせるといったケースもありました。2020年の新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあって、リフォームの訪問販売被害については、あまり聞かなくなりましたが、実はそんなことはないようです。

 住宅リフォーム・紛争処理センターの調査でも、図表2にあるように、再び増加の兆しがみられます。2020年度には593件に減ったのが、2021年度は751件に増えました。対前年度比26.6%の増加です。

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soudan_web2022.pdf (chord.or.jp)

点検商法による被害も後を絶たない

 国民生活センターでも、リフォームの訪問販売に関しては関心が高く、各地の消費生活センターなどでの相談件数を毎年集計していますが、訪問販売によるリフォーム工事の被害に関する相談件数は2021年度が9734件で、2020年度の8784件から11.4%増加しています。2022年度に入ってからも2022年6月末現在で1753件と、前年度同期の1868件とさほど変わらないレベルが続いています。

 しかも国民生活センターでは、点検にきたといって来訪、「工事しないと危険」などと脅して契約を結ばせる、いわゆる「点検商法」もあると注意喚起しています。こちらは2021年度が7421件で、2020年度の7023件から5.7%の増加で、やはり2022年度に入ってからも減っていないのが現実です。

身内の高齢者だけの世帯はシッカリ監視

 リフォーム工事の訪問販売や点検商法は、繰り返しますが、高齢者世帯を主な対象としているのが大きな特徴です。離れた場所に高齢者だけで住んでいる身内がいる場合には、そうした被害に遇わないように,日常的にレクチャーしたり、被害に遇っていないか定期的にチェックすることが重要です。お年寄りは気が弱くなったり、生活に不安を感じる度合いが強まっていますから、気丈にみえても、狡猾で強引な商法には、ついつい騙されてしまうことがあります。認知症が入っていたりしても、悪質な業者はおかまいなしですから、十分に注意しておきたいものです。

一戸建てもマンションも「ひび割れ」がトップ

 話を住宅リフォーム・紛争処理支援センターの調査に戻すと、住宅に関する相談では、76.0%が「不具合あり」としています。実際に住まいに不具合が発生してから相談する人たちが多いわけです。自治体の相談窓口の担当者によると、「トラブルが発生する契約前に相談していただくのが一番です。トラブルが発生してしまってからでは、その解決は簡単ではありません」としていますが、不具合に困っている人が少なくありません。

 その不具合事象や不具合箇所をみると、一戸建てにおいては、外壁や基礎に関する「ひび割れ」が20.8%と最も多く、次いでやはり外壁や屋根の「雨漏り」が14.6%、住宅設備機器の「性能不足」が11.6%で続いています。マンションなどの共同住宅においても、「ひび割れ」が13.6%のトップですが、不具合箇所としては、内壁と外壁が中心になっています。マンションですから、屋根の不具合は少なく、内部の壁の「ひび割れ」が多いようです。

不具合の多くは入居1年未満に出てくる

 その不具合発生時の築後年数はどうなのかといえば、「1年未満」が29.1%と最も多く、「1年以上2年未満」が10.3%で、2年以上になると急速に少なくなります。築後3年未満の合計が45.8%と半数近くに達します。

 リフォームに関する相談では「不具合あり」の割合が64.9%で、「不具合なし」は35.1%でした。住宅では「不具合あり」が76.0%でしたから、リフォームにおいては不具合と同時に、契約を巡るトラブルなどが多いのではないかと推測されます。これから、住宅の購入やリフォームを考えている人にとっては、興味深い内容が多いので、ぜひ事前に詳細をチェックしておきたいところです。

★住宅リフォーム・紛争処理支援センター
統計・資料等|(公財) 住宅リフォーム・紛争処理支援センター (chord.or.jp)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


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