シロアリや屋根の剥がれを口実に家に入る…悪徳リフォーム点検商法が増加、撃退法は?
新型コロナウイルスの感染防止で外出自粛が続くなか、マスクを悪用した新手の送り付け詐欺など、在宅者を狙った悪徳商法も増えている。住宅リフォームの点検商法もその一つだ。
在宅時間が長い今、住宅リフォームの点検商法に注意!
3月末に住宅リフォーム・紛争処理支援センターが、住宅リフォームの悪質な「点検商法」に注意を呼び掛け、消費者庁等の注意喚起チラシを紹介した。
実は、点検商法に遭遇したという人の話を聞いたことがある。在宅していたところ、近所でリフォーム工事をしている事業者だと名乗る人が訪れ、「屋根の瓦が剥がれているので改修が必要だ。自分で屋根に上がって作業ができるか?」と聞いてきた。それができたので「できる」と答えてその場は終わり、後で屋根に上がったところ、瓦に異常はなかった。そこで、点検商法だったことに気づいたという次第だ。
屋根に上がったり、床下にもぐったりといったことは、普通の人には難易度が高い。そこで、雨漏りやシロアリ、給排水管の水漏れなどを口実に家に入って建物を見て回り、不具合があると言い立て、法外な費用の工事の契約を取り付けようというカラクリだ。不安をあおり、家に入り込んで断りづらい状況をつくったうえでしつこく勧誘するので、断り切れずに契約してしまったという被害者も多い。
契約してしまった場合、訪問販売による取引で契約書を受け取った日から8日以内であれば「クーリングオフ」で契約を解除するという方法もある。泣き寝入りせずに、住宅リフォーム・紛争処理支援センターなどに相談しよう。
こうした被害に遭わないためには、家の不具合を指摘されても、知らない事業者は家に上げないことだ。「知っている事業者がいるから、そこに見てもらう」などと言って、家に上げる前にきっぱり断わろう。そして、本当に不具合があるかどうか気になる場合は、所在のわかっているリフォーム事業者に見てもらい、建物の状態を確かめるのがよい。
リフォーム工事は複数事業者から相見積もりを取るのが基本
さて、家に不具合があったり、改修したい箇所があったりする場合は、リフォーム事業者に現地調査をさせて、見積もりを出してもらうことになる。専門知識のない一般の人には、この見積もりが難敵。妥当な額かどうか判断するのがなかなか難しいからだ。
そこでおススメしているのが、複数の事業者から相見積もりを取り、それらを比較することだ。ここで間違えてはいけないのが、見積もりの金額だけを見て、安いほうに決めてしまうこと。もちろん、支払う費用は安いほど良いが、契約した後でやっぱりこの費用も必要だったと追加費用が発生し、結果的に同じ程度の額になるということもありえる。
また、リフォーム工事で最も避けたいのは、近隣トラブルだ。リフォーム工事は終わったものの工事中に近隣ともめてしまい、その後で住みづらくなるといったことにはなりたくないはず。近隣への説明の有無、音を伴う工事の実施時間、資材の搬入搬出方法、ゴミの処理方法など、適切に工事が実施されるかどうかの確認も重要だ。
そこで、それぞれの見積額について説明をしてもらう機会を設けて、
・どういった工事を行うのか
・どんな建材を使うのか
※使用する建材は事前に決めておくのがベストだが、決めていない場合は見本やカタログなどで商品や単価を確認しよう
・工事を監理するのは誰でいつ何回行うのか
・どういった工程で工事が進むのか
・資材の搬入搬出はどのように行うのか
・工事作業者の車の駐車場所はどこになるか
・廃棄物の処理はどのようにするのか
・近隣への説明などをどうするのか
などの工事の詳細を聞きながら、見積書のどこと関連するのかを確認していくのがよいだろう。
相見積もりで、工事そのものの費用はそれほど差がなかったが、それ以外の費用で差が大きいという場合もある。それぞれの事業者で背景が異なるので、廃棄処分費用が安い事業者があったり、作業員が社員の場合と外部委託の場合で諸費用に違いがあったりと、違いが生じる理由はさまざまだ。ただし、作業用車両を敷地内に駐車する前提か、コインパーキングに駐車する前提かによって駐車場代の有無が異なるといった点は、条件をそろえて比較する必要がある。
なお、相見積もりのマナーとして、次のことに配慮したい。
・相見積もりであることを事前に知らせる
・どこに相見積もりを依頼したかは知らせない
・提出された見積り書を他の事業者に見せない
どこに相見積もりを依頼するかをあえて知らせる方法もあるのだが、最悪の場合は依頼先同士で談合して、高い見積もりを提示する危険性がある。どこに相見積もりを依頼したか聞かれても、知らせないのがよいだろう。
保証やアフターサービスなど、工事後のフォローもカギに
一方、リフォーム事業者選びでは、リフォーム工事の額だけでなく、工事後の保証やアフターサービスを決め手にする場合もある。
新築の住宅を建てたり買ったりする場合、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」で、住宅の構造上重要な部分については10年間の保証が義務付けられている。加えて、各事業者団体や各社でそれぞれ、アフターサービス保証を付ける場合が多く、構造上重要な部分でなくても一定期間、特定部位の不具合に対しては無償で補修してもらえるのが一般的だ。
一方、リフォーム工事の場合は、新築住宅を建てるような大規模な事業者もあれば、従業員数人規模の地元の工務店もあれば、最近では家電量販店やホームセンターでもリフォームを請け負うなど、取り扱う事業者はかなり広がる。
新築住宅では一般的な「保証書の発行」ではあるが、住宅リフォーム推進協議会(リ推協)の「2019年度 住宅リフォーム事業者実態調査」によると、調査に回答したリフォーム事業者全体の35.3%しか発行していないことがわかった。また、工事後のアフターサービスについても、新築住宅では一般的な「経過年数により定期点検を行う」のは34.8%だが、「顧客から要請があったときに対応する」ほうが78.7%と圧倒的に多い。
こうした「リフォーム後の不具合にどのように対応してもらえるか」も、相見積もりで比較する際には、ぜひ確認しておきたいポイントだ。
ほかにも、住宅の建設工事中に発生した火災や突発的な事故などで住宅が損傷した場合に備える「建設工事保険」や、建設工事中に偶発的な事故などで他人にケガをさせたり物を壊したりした場合の賠償責任に備える「請負業者賠償責任保険」、リフォームした住宅に欠陥などがあったときの補修費用に備える「リフォーム瑕疵(かし)保険」など、リフォーム事業者向けに各種の保険も用意されている。
リ推協の同じ調査を見ると、保険に加入している事業者の割合は、「建設工事保険」が76.2%、「請負賠償責任保険」が58.3%、「リフォーム瑕疵保険」が51.6%となっている。保険に加入している事業者のほうが、万一のときに安心なので、保険の加入なども確認すべきポイントになるだろう。
ただし、リフォーム後の保証や工事に伴う保険などに加入しているのは、規模が大きい事業者ほど多くなる。さまざまなサービスを提供する規模の大きい事業者は、その分の費用も上乗せになるので、見積額が高くなる傾向も見られる。見積額の低さか、サービスの充実か、よく吟味したい。
さて、住宅のリフォームについては、無防備なままでいると、よくわからないから言われるまま契約してしまうということが起こる。それなりに理論武装することで、自分なりの判断ができるようになる。悪質なリフォーム事業者を回避し、適切な事業者を選べるようになってほしい。
(文=山本久美子/住宅ジャーナリスト)