2016年10月28日付本連載前回記事『老後必要資金は6千万円?平均貯蓄額の1800万円なくても心配ない?老後貧困は誤解だらけ』において、老後資金が少なくても安心して生活できる方法を書きました。
簡単にまとめると、以下のようになります。
(1)老後の生活を年金(収入)の範囲内にすればいい。
(2)年金(収入)の範囲内で生活できなくても(月々の赤字×寿命までの月数)の預金があればいい。例えば、月々の赤字4万円・老後期間27年間の場合、予備費500万円を含み、1800万円の預金があれば安心。
(3)月々の生活が年金だけでは足りず、資産(預金、家等)も無い場合は、生活保護を受ければ生活できる。
しかし、どうしても生活保護を受けたくないという方もいらっしゃいます。また、神奈川県小田原市で一部の市職員が、「HOGO NAMENNA」(保護なめんな)と書かれたジャンパーを着て生活保護者宅を訪れていたという実態があり、生活保護を必要とする人たちでも、受けたくないという気持ちが強くなるのではないかと懸念されます。
住宅費は、年金の少ない人には重荷になります。まして年齢を重ねた人にとっては、住宅を借りることすら難しいという現実があります。
そこで、東京都のケースを例に、住宅供給公社が紹介する3種類の住宅を検討してみましょう。
3種類の住宅の違い(収入制限、単身者入居、都民以外の申込、家賃補助、募集方法)
・一般住宅…家賃額により下限あり、可(一部住戸除く)、可、なし、先着順募集/抽せん募集(新築募集)
・都民住宅…家族数により上限・下限あり、原則不可(住宅により条件付可)、可(東京都施行型は不可)、あり(住宅・収入によりない場合あり)、先着順募集/抽せん募集(待機者募集ほか)
・都営住宅…家族数により上限あり、条件付可、不可、所得により家賃額が異なる、抽せん募集など
「一般住宅」は家賃補助も家賃の減額もありません。「都民住宅」は家賃の補助はありますが、所得による減額はありません。収入の少ない人にとって、家賃を抑えられるのは「都営住宅」です。
しかし、都営住宅は「10年間申し込んでいるのに、抽選に当たらない」という声をよく聞きます。確かに、安くて、日当たりも良く、皆が入りたいと思っている住宅は申込倍率が高く、なかなか入居することは困難です。
そこで、皆がちょっと敬遠する住宅を考えてみましょう。それが「わけあり住宅」といわれるものです。「わけあり」とは「賃借料が安い理由」があるという意味で、そこで事件、事故等があった住宅です。過去に事故等があったとはいえ、リフォームをきちんとしてありますし、なんの形跡もなくなっています。むしろ、通常の住宅よりきれいになっているくらいです。何も恐れることはありませんが、どうしても気持ちが悪いという人がいます。気になる人には無理強いはできませんが、安さを重視する方にはお勧めです。
都営住宅は、年4回の抽選方式(5月、8月、11月、2月)のほかに、直接受付募集があります。特定物件(孤独死で発見が遅れた住宅、自殺等があった住宅)の募集で一定期間、家賃の軽減措置を講じて募集します。申込順に受け付け、当初3年間は家賃が半額程度になります。
国民年金だけの収入で、ワケありの2部屋ある都営住宅に月8000円の家賃で快適に住んでいる方もいます。住宅費が月1万円以下であれば、収入が低くても生活保護を受けずに暮らしていけるのではないでしょうか。
(文=藤村紀美子/ファイナンシャルプランナー・高齢期のお金を考える会)