昨年あたりから人気が急上昇している「ふるさと納税」。多くの人がご存じのとおり、ふるさと納税とは、地方自治体に2000円以上の寄付をすると、税金の使い道を指定するという社会貢献ができ、寄付した金額から2000円を引いた額が翌年の住民税・所得税から控除され、さらには特産品までもらえる制度です。
税制改正により、今年からは寄付金控除の上限(住民税分)が2倍になり、4月からは「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の利用により、確定申告をしなくても税金控除の恩恵にあずかれる制度が誕生しました。ふるさと納税の人気はますます高まっており、自治体によっては新年度開始からわずか2日で受け付け休止となったほどです。
今回、注意を促したいのは、「確定申告が不要」という点です。
この言葉だけが一人歩きしている感がありますが、確定申告が不要となるための要件を詳しくご存じでしょうか。確定申告不要制度が使えるのは、次のすべての条件を満たした人です。
(1)会社員
(2)年収2000万円以下
(3)給料は1カ所からしかもらっていない
(4)確定申告をする義務がない
(5)2015年にふるさと納税を行ったのは、4月1日以降である
(6)寄付した自治体の数は5カ所以下である
(7)ワンストップ特例制度を利用することを「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」で申告した
上記の条件から一つでも外れる人は、確定申告をしなければなりません。具体的には、「個人事業主」「年収2000万円以上の会社員」「給料を2カ所以上からもらっている会社員」などが該当します。
確定申告が必要なケース
そして、最も注意をしたいのが、本来ならワンストップ特例制度を使って確定申告をしなくても税金が安くなるはずの、次のような会社員です。
(1)医療費控除を確定申告する
(2)住宅ローン控除の初年度の確定申告がある
(3)15年1月1日~3月31日までの間にふるさと納税をした
(4)寄付した自治体の数が6カ所以上になった
まず、(1)は、家族全員分合わせて年間10万円以上医療費を支払っている場合、10万円を超えた分につき、課税額から控除してもらえます。また、(2)は、住宅ローンを利用して住宅を購入した場合、一定額を控除してもらえます。
しかし、これらの控除を申請する場合、ふるさと納税ワンストップ特例制度を併用することはできません。つまり、確定申告において、住宅ローン控除や医療費控除を申請するのであれば、ふるさと納税についても同時に申告しなければならないのです。
続いて(3)です。確定申告不要制度は、15年4月1日以降の寄付に対して適用される制度です。そのため、15年1月1日~3月31日までの間にふるさと納税をした人は、確定申告が必要になります。
最後に(4)です。「ワンストップ特例制度を利用して5カ所以内に抑えるつもりだったけれど、気が付いたら6カ所に納税した」ということがあるかもしれません。このような場合には、ワンストップ特例制度が使えません。
例えば6カ所に納税した場合に、「5カ所を超えた1カ所分だけ確定申告すればいいですか?」との質問を受けることがありますが、答えは6カ所全部について確定申告をする必要があります。
寄付の翌年に自治体から連絡がきますので、面倒がらずに確定申告をしてください。「ふるさと納税はしたいけれど、確定申告をしたくない」という人は、計画的な寄付を心がけて、寄付先の記録をとっておきましょう。
ふるさと納税は、寄付をすることで社会貢献できる制度ですが、現在自分が住んでいる自治体の税収を減らすことにもつながります。特産品が魅力的であることは同感ですが、「愛あるふるさと納税」をしてください。
(文=前野彩/ファイナンシャルプランナー)