小見山議員は、2014年1月から秋にかけて都内のライザップ施設を利用したとされており、同議員による説明は「政治家としてスポーツ振興に取り組んでおり、自ら体験したことを広く有権者に伝えたいという思いがあった」というものだった。
これについて、法的な問題はないものの、「スポーツクラブぐらい自費で行ってほしい」(30代女性)、「政治にどのように役立ったのか、きちんと説明すべき」(30代男性)などの批判が起きているのが現実だ。
そもそも、政治資金および政治資金規正法というのは、どのような性質を持つものなのか。弁護士法人AVANCE LEGAL GROUP LPCの榎本啓祐弁護士は、以下のように解説する。
「政治資金とは、政治活動を行うために使われる資金のことです。わが国で採用されている議会制民主主義においては、選挙時や日常の政治活動に関して、政党などの政治団体が多額の政治資金を要します。そのため、政治団体が政治資金をどのように調達し、どのように使用するかというのは、政治活動において重要な事項となっています。
政治資金の収支が不明確な場合、国民はどのような政治活動が行われているかを把握できず、選挙時に『誰に投票したらいいか』の判断ができなくなってしまいます。また、政治資金の授受が自由に行われてしまうと、『あの人は政治資金をたくさんくれるから、あの人に有利な政治活動をしよう』などと、癒着や政治腐敗を生じさせる可能性が生じます。
そこで、政治資金規正法は、政治資金の収支を公開すること、および政治資金の授受を規制することなどにより、『政治活動の公明と公正を確保』することを目的としています(政治資金規正法第1条)。しかし、同法には原則として『政治資金の支出態様の規制』はありません。政治資金がどのように支出されていたとしても、国民にわかるように公表されていれば、『それが正しいかどうかは、国民が判断してね』というスタンスなのです」
支出自体を隠した場合は違法の可能性も
決して安くない金額の政治資金を使ってトレーニングにいそしんでいた小見山議員の「政治活動だった」「スポーツ振興のため」という説明をどうとらえるかは、有権者次第ということだ。
「小見山議員の説明を聞いて『素晴らしい考えだ』と思う人もいれば、『けしからん』と思う人もいるでしょう。しかし、支出自体は法に違反するものではないため、それらの感情は選挙で行動として示すしかありません。
過去には『政治資金からキャバクラ代を支出していた』などの問題が報じられたこともありますが、これについても同様で、『不適切な支出』として政治的責任を問われることはあっても、『違法な支出』として法的責任が問われる性質のものではありません。
ただし、支出自体を隠していた場合は、政治資金規正法に違反する可能性があります。また、政治資金を用いて、法律で規制されている内容の支出を行った場合は、当然違法となります。例えば、公職選挙法においては、公職の候補者による選挙区内の者に対する寄附が禁止されています。これを政治資金の支出によって行った場合、当該支出は公職選挙法違反となります」(榎本弁護士)
結局、小見山議員は「いろんな批判を受けて支出が適当でなかったと判断した」として、12月1日付で収支報告書を訂正、問題となった支出を削除して、自己資金から同額を資金管理団体に戻している。違法ではなかったものの、政治家として大きなイメージダウンになったことは間違いない。
(文=編集部、協力=弁護士法人AVANCE LEGAL GROUP LPC・榎本啓祐弁護士)