4年に一度、全国で選挙を一斉に実施する「統一地方選挙」が今年4月、行われる。総務省が発表した調査結果によると、47都道府県で計981の首長・議員選挙が行われる予定。
統一地方選挙の投票は2回に分かれているが、そのうち前半戦に当たる4月9日に行われる神奈川県川崎市議会議員選挙に立候補予定者が、「まだ告示日前なのに選挙運動を行っている」として物議を醸している。
公職選挙法において、選挙の告示前に「選挙運動」をすることは「事前運動」として禁じられている。今回、波紋を広げているのは、川崎市議会議員選挙に立候補を予定している日本共産党の斉藤温(のどか)氏だ。
斉藤氏は2017年と2021年に衆議院選挙で神奈川9区から立候補したが落選。現在は党神奈川県委員、党川崎北部地区委員を務める。その斉藤氏が、街宣車で「共産党の斉藤のどかです」と連呼しながら市内を巡回しており、これが事前運動にあたり違法ではないか、との声が出ているのだ。
公選法では、“選挙活動”は告示日以降でなければできないことになっている。そこでポイントは、斉藤氏の“名前連呼”が選挙活動にあたるか否か、ということになる。Business Journal編集部では、川崎市麻生区選挙管理委員会事務室に問い合わせた。
――共産党の候補者が街宣車で自身の名前を連呼しているが、事前運動にあたるのではないか、との指摘がある。
選管事務室「『選挙運動』は告示日前には禁止されていますが、『政治活動』はいつでも行うことができます。お問い合わせの街宣車でのアピール活動が『選挙運動』なのか、『政治活動』にあたるのかは、いくつかの判断ポイントがあります。
たとえば、『特定の選挙での投票を呼び掛けている』かどうかです。今回であれば、『4月9日の市議会議員選挙に立候補する〇〇です』とか『〇〇に投票をお願いします』などと自身への投票を訴えていれば、選挙運動となり違法です。しかし、名前を複数回唱えただけで、即違法とはいえません」
――斉藤氏は自身のSNSなどで「2023年4月、川崎市会議員選挙(麻生区)に立候補予定」と謳っており、その候補者が名前を連呼していれば、選挙運動とみなすこともできるのではないか。
選管事務室「私が直接、その街宣車を見たわけではないので断言はできませんが、先方もギリギリの(違法ではない)ラインを見定めて活動していると思います。特定の選挙を示して『〇〇に投票してください』と明言していなくても、街宣車の塗装やチラシなどを総合的に判断して違法となることもありますが、告示前に街宣車で名前を連呼したからといって、ただちに違法とはいえないでしょう。ただ、この時期に4月の選挙に立候補する人が政治活動をしていれば、選挙を見据えた運動である可能性が高いとはいえると思います」
公選法により選挙運動は「公示・告示日から選挙期日の前日まで」しかできないと定められている(公職選挙法第129条)。違反した者は、「1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処する」とされており(公職選挙法第239条第1項第1号)、選挙権及び被選挙権が停止される(公職選挙法第252条第1項・第2項)。そのため、各党や立候補予定者は、“選挙運動”とならないように配慮しながら街頭演説などを行っている。
だが、共産党はこれまでにもたびたび、事前運動にあたるとみられる選挙活動を行って物議を醸してきた。昨年の参議院議員選挙でも、公示前に複数の候補者が名前入りのタスキをかけて街頭演説を行っており、山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士も、その違法性を指摘している。
「少し条文の適用が難しいのですが、公職選挙法第129条、第143条1項3号、第239条1項4号により、選挙期間中ではないのにタスキを使って政治的な行動をしていれば違法であり、2年以下の禁固刑や50万円以下の罰金が科せられます。
ちなみに選挙運動とは、公職の選挙で当選するための有利な活動(『私に一票をお願いします!』などと訴えること)を言うのですが、たとえ『今の日本はいかん! 自衛隊反対!』などと今の政策を非難するだけの内容であったとしても、『党』の演説としてやっているなら、選挙運動以外のなにものでもないでしょうね」(山岸純弁護士)
選挙のたびにグレーな選挙活動が指摘される共産党。国政政党として、法律を遵守して選挙に挑んでほしいものだ。