ひとえに「愛煙家」といっても、喫煙マナーは十人十色――。
たとえば、結婚や同棲を機に相手(禁煙者/嫌煙者)の気持ちを忖度して、家では「ホタル族」に転向した人もいれば、「子どもが生まれるまでホタル族には踏み切れなかった」と苦笑される方や、「妻の妊娠を機にベランダ派に切り替えた」という中間派もいるかもしれない。
では、そんな現役の愛煙家で愛車持ち(ないしは仕事柄、営業車を運転する)という方にお聞きしたい。あなたの車内マナーは、以下のうちどれだろうか。
(1)自身は喫煙者だが、気分上、愛車だけは購入時から「全面禁煙」を貫いている。
(2)妻子を問わず家族が同乗する際は「禁煙」、自分だけの運転時は「喫煙可」としている。
(3)家庭内でも愛車内でも外食先でも「自分ファースト」で遠慮なく吸う。
(4)営業車で外回りの際は、同僚が非喫煙者でも吸わせてもらっている。
「愛車至上主義」で車内は別の顔となる(1)のタイプは結構いる。消臭剤のCMよろしく、家族の同乗時に「タバコ臭~い」と鼻をつままれている(2)のお父さんも多いだろう。真夏の猛暑下に車窓を全開にして煙を吐き出す(4)も、街中で見かける。
さて、問題は(3)だ。いつでも・どこでも自分最優先の喫煙態度は近い将来、「条例違反」で「通報」されて「罰則」を科せられるかもしれない……。
大勝利の都民ファーストの会、受動喫煙防止策が公約
片や都民ファーストの会が歴史的大勝利、片や自民党が歴史的大敗で終わった東京都議選(7月2日投開票)の明暗――。その選挙結果は、まだ誰もが記憶に新しい。
自民党大敗の最大要因といわれた稲田朋美防衛相(当時)の応援演説先(6月27日)での問題発言の2日前、ある記者会見での発言が注目されたのをご記憶だろうか。
「家の中(の喫煙)については、努力義務規定を設けるかたちになる」
これは弁護士にして日本禁煙学会理事、今回の都議選で都民ファーストの会から出馬した岡本光樹氏(=北多摩2区でトップ当選)の提言だ。
この6月25日の会見で都民ファーストの会は、「公約」として受動喫煙防止策を掲げることを発表し、とりわけ「子どもを受動喫煙から守る条例」の制定案は、他党公約との違いを鮮明に打ち出した。
「受動喫煙状態にある子どもを見つけた人は通報できる」
一方、公共施設や飲食店の「屋内原則禁煙」に関しても、都民ファーストの会の条例案は一味違っている。「従業員ゼロの店」や「全従業員が『喫煙同意』の店」は例外としているあたり、受動喫煙防条例についても、例の「築地は守る、豊洲を生かす」の小池マジックがここでも読み取れる。
後述するが、要は「子どもは守る、オトナを満喫させる」という秘策である。この日の会見でも、小池特別顧問は「この課題は長年、議論ばかり続いている。(滞る国の議論を)見守るだけでは間に合わない」と、同会が謳うスモークフリーな社会実現への迅速な姿勢を強調した。
都議選の歴史的勝利に対し、一般社団法人日本禁煙学会の作田学理事長も「受動喫煙防止に大きな弾みがつく」と大いに評価。都民ファーストの会は、公約上の条例案を9月の定例会に提出すると見られている。
かように現時点から「かなり厳しい案になるだろう」と禁煙派からの期待を集めている同会の条例(前出の岡本光樹議員が作成)。しかし、いざ制定となると、紛糾するのも必至で、なかでも次の「厳しさ」は「禁煙ファッショ」的な批難を避けられないだろう。件の条例曰く、「家庭や自動車内で継続的に受動喫煙状態にある子どもを見つけた人は通報できる」としている。
ホタル族も風前のともし火か……
小池氏の見解はこうだ――。
「『個人の家に手を突っ込まないで!』と思われるかもしれませんが、(家庭内や車内での喫煙は)子どもの健康に良い方向ではありません」
努力義務規定の設定はまだしも、「通報」の奨励となれば、もはや喫煙は虐待扱いも同然だ。ところが「喫煙と通報の関係」については、「何を今さら」と苦笑する、さる業界の人々もいる。
「空車時とか休憩中のタクシー車内で美味しそうに一服している光景を盗撮されて(笑)、営業所に投稿されたり、チクられたりして、上司からお目玉食らっている愛煙家の同僚はいまだに減りませんよ」
先日、利用した法人タクシーの運転者は、そう苦笑して「業界の規則≠実態」を教える。
「お客さんに車内禁煙を強いていながら隠れて……いや、実際は空車走行中に窓を開け放って堂々と吸っている同業者をよく見かけますよ。歩道でカメラを構えていれば誰でも、そんな写真を撮れるでしょう」
それが現実ならば近い将来、「今日、パパが通報された!」「車内では吸うなって、あれだけ言ったのに……」といった家庭争議も起きかねない。
最近では自宅のベランダ喫煙でさえも、近隣苦情の前には風前の灯状態。せめてのもの愛車喫煙さえままならないのであれば、まずは「ホタル族」卒業から慣らし運転してみますか?
(文=ヘルスプレス編集部)