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室井一辰『気になる医療の“裏”話』(6月8日)

血圧、血糖値…新健康基準の衝撃 なぜ従来の正常値を大幅緩和?薬剤費抑制狙う健保

室井一辰/医療経済ジャーナリスト
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血圧、血糖値…新健康基準の衝撃 なぜ従来の正常値を大幅緩和?薬剤費抑制狙う健保の画像1「新たな健診の基本検査の基準範囲(概要)」(「健康保険組合連合会 HP」より)
 5月26日付日本経済新聞は、国が都道府県別に医療費抑制の目標値を設定する方針だと報じた。同記事によれば、都道府県別に設定された目標に従い、市町村の国民健康保険が医療費抑制に動くとみられる。さらに、会社員が加入する健康保険組合も目標値を設けて医療費の抑制に動く。今後、国主導で医療費抑制の動きが盛り上がりそうで、例えば、健康保険組合が医療行為の有効性を評価して無駄と思われる医療行為を特定した上で、無駄な医療を受けた患者に警告するような仕組みが整備される可能性もある。

 同紙によると、6月にも安倍晋三首相が有識者を集めて都道府県別の抑制目標設定に関する議論をスタートさせ、2016年度をメドに実施する見通しだという。日本の医療費は毎年3%程度のペースで増加し、11年度には38兆5850億円に達している。歯止めがかからない状態だが、国がリーダーシップを取って医療費を抑え込もうとする。

 主な抑制対象となるのは、75歳以上の後期高齢者医療制度だ。厚生労働省によると、75歳以上の人々にかかっている医療費総額は10年度に13兆円前後にまで上り、全体の約3割を占める。75歳以上の人々は人口ベースでは国民全体の1割に過ぎず、医療費のウエイトは高いといえる。これをなんとか抑制しようと08年に導入されたのが後期高齢者医療制度である。

 この制度は、もともと75歳以上の人々は公的な健康保険で医療を受けている人が8割近くおり、公的な健康保険の負担が高まっていた。そこで、会社員の入る健康保険をはじめ、他の健康保険にも資金を捻出させ、公的な健康保険の負担を全体の4割弱まで下げるものだった。

 さらに、この後期高齢者に実施する医療費そのものを全体的に下げようという動きが、今回の都道府県別の目標値導入だ。

 無駄な医療費を使っている都道府県を中心に是正を促していくことになるわけだが、日経新聞によれば、現状では福岡県、高知県、北海道などが75歳以上の1人当たりの医療費が高くなっている。平均は年間約90万円に対して、トップスリーは110万円前後だ。

 国は、都道府県に加えて、会社員が入る健康保険組合にも目標値を設定させる。健康保険組合は後期高齢者医療制度の発足以来、国に後期高齢者医療支援金と呼ばれる支援金を納めて、公的な健康保険の負担を軽くしてきた。今後、所属する人の健康を向上させることに成功した健康保険は、後期高齢者に対する負担金を軽減する方針だ。

●健保連と日本人間ドック学会、新健康基準を発表

 健康保険組合といえば、最近、大きく注目された動きがあった。企業が設立する健康保険組合を会員とする健康保険組合連合会(健保連)が日本人間ドック学会と発表した新健康基準だ。

 実はこの基準発表の動きは、国による医療費抑制の目標設定と関係がある。

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