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徳岡晃一郎「世代を超えたイノベーションのために」

プロの仕事師は、なぜ数十億円の年俸を捨てたのか? 会社に捨てられ慌てる中間層

文=徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院教授
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●自分のキャリアをコントロールする

 ひるがえって日本。日本には平等社会のよさがあり、ランチョ・サンタフェのような待遇は望めないが、同時にプロ意識もそこそこで、最後は会社に使い捨てられる間際になって慌てる光景が目に浮かぶ。日本にはT君のようなエリートは少なく、良くも悪くも中間層が日本の躍進を支えてきた。そういう意味ではイノベーションは中間層の知的レベルにかかっている。だが、その中間層がどこまでプロ意識を鍛え、それを発揮し、価値を生み出しているだろうか。組織人感覚がプロ意識を凌駕し、組織に安住してはいないだろうか。いつ独立してもやっていけるような知的差別化を図っているだろうか。中間層の「知の貧困化」が進んではいないだろうか。その一例は読書の少なさ、書籍や新聞の発行部数の激減にも表れている。グローバルな情報収集能力も乏しい。

 日本の同質文化の中で、微細な優劣をめぐる成果主義に一喜一憂し、本質的課題に体を張って取り組む真のプロ意識を忘れてしまってはいないだろうか。日本人としてはランチョ・サンタフェは望むべくもないが、自分の仕事の成果にだけは誇りを持ち続けたい。太く短くではなく、細く長く知を磨き続け、世代を超えたイノベーションに寄り添っていきたいと思うのは筆者だけではないはずだ。

 そうしたキャリア設計は、若いうちから意識して自分の生活をコントロールしないと難しい。プロの仕事師としてどう自分をつくり込むか。自分なりのゴールイメージを考え続けて、若いうちから少しずつ具現化するよう、取り組んでいく必要がある。これを筆者は知識創造理論のSECIモデルに基づき「SECIキャリア」と呼んでいるが、次回はそれについて考えてみよう。
(文=徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院教授)

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