ところが、年収1000万円を超えてくると事情が変わってくる。高所得者で継続してジムに通って運動をしている人は多くないようだ。ダイエットや健康維持に、ジムに通う必要はないうえ、全国や世界を飛び回るなど多忙なため、定期的にジムに通うよりも自分の体に合った食事を取ることで体調管理をするほうが楽で都合がよいのだろう。
それだけではなく、日常生活の中でよく体を動かしている。例えば、「エスカレーターを使わず階段を昇る」「タクシーを使わずなるべく歩く」などで、さらに仕事をしながら運動していることもあるのが高所得者の特徴だ。
これらは一見、地味で効果がわかりにくいようだが、毎日の習慣を積み重ねていくことで、大きな違いが生まれる。体がなまってからジムで鍛えるのではなく、常に一定の健康状態を保っているのだ。
最近は、炭水化物抜きダイエットや、併せて糖質も抜くケトジェニックダイエットなどがはやっているが、低所得者ほど炭水化物を抜いている。それに対して高所得者は米飯をしっかり食べている。
高所得者は、流行や毎年変わる新しいダイエット情報などの影響は受けない。炭水化物でも、パンより徐々に糖となって脳に送り込まれる米飯が良いということを熟知しているのだろう。
ドリンクのオーダーにも違い
興味深いのは、居酒屋などで最初のドリンクには何を頼んでいるか。
以前は、とりあえず乾杯ドリンクはビールと決まっていた時代もあった。最初にビールで乾杯するのは一般的な光景だったし、仲間と飲む最初の1杯がたまらなくおいしく感じたものだ。今はさほどそんなシーンは見かけなくなってきた。
そして現在は、その1杯目に特徴が表れている。低所得者は必ず1杯目にビールを頼むが、高所得者ほど最初のお酒からこだわる傾向があるようだ。もちろん、高所得者でも「まずはビール」という人もいるが、多くは1杯目からウイスキーのロックや、ハードなリキュールを飲む。ワインを頼む人も多い。
最初のオーダーは結構印象に残る。自分のペースを守り、お酒にもこだわりがあるということをアピールして、この第一印象を大切にしているのかもしれない。お酒の席は心が開放的になり、相手との距離を縮めるチャンスだ。高所得者ほど、セルフイメージの演出には余念がないのだ。
その他のアンケート結果からも、透けて見えるのは低所得者層の「質より量」といった食生活サイクルだ。「大盛りが無料なら必ず頼む」「バイキングでは限界まで食べる」などの回答が多い。「夜中にラーメン屋をハシゴした」という人もいる。
また、低所得者層には食事マナーもなっていない人が多い。「昼食は一人でスマホを見ながら済ませる」「上司との食事中にスマホをいじっていて怒られた」「食べる姿勢が悪い」など、育ってきた環境の影響もあるが、マナーが悪ければ仕事相手や上司の評価は下がる可能性もあり、デメリットが多い。「出張など、会社の経費で泊まったホテルのバイキングでは、苦しくなるほど食べる」など、卑しさが露呈している人もいる。
最近は、一人での生活を楽しむ「ぼっち充」が増えているようだが、特に低所得者に多い。流行の食べ物を追ってみたり、珍しい物を食べてインターネットに投稿しているが、何しろ食べるのが早いという特徴がある。とても食事そのものを楽しんでいるようには思えない。一人ぼっちの食事ゆえの早飯も、低所得者ならではと考えられる。
逆に、高所得者は一人で食事をせず、必ず誰かと会食する傾向がある。どんな時でも出世や収入増につながる可能性があるので、食事も貴重な情報交換の場として誰かを誘ってランチや夕食に出かけているのだ。
このように、食事の仕方によって、人生が大きく変わるかもしれない。
(文=氏家秀太/空間プロデューサー・ビジネスコンサルタント)
【アンケートからわかった低所得者の食事の特徴】
●とりあえずビールをオーダーする
●体形維持やダイエットをする場合、食事を変えず運動をする
●大盛りが無料なら必ず頼む
●ご飯をあまり食べず、炭水化物を抜いている
●ビジネス会食はしない
●とりあえず野菜サラダをオーダー(高所得者は漬物を頼む)
●飲食後のシメにラーメンを食べる
●カロリー制限をしている
●忙しい日はランチを抜く
●食事中に携帯電話をいじる
●よく行く、もしくは好きなお店はどれですか?(複数可能)
ファミリーレストラン、ファストフード、ラーメン、回転寿司、カレー専門店、牛丼店
●朝食、昼食に野菜ジュースや豆乳を飲む
●ご飯を食べるのが早い
●夕食が、レトルトパックやカップラーメンの時が週1回以上ある
●最近、フルーツを食べていない
●外食で異物混入していても、さほど気にしない
●中国産も気にならない
●缶コーヒーをよく飲む
●朝食、昼食バイキングは限界まで食べる
●会話が少ない
●食べる姿勢が悪い