あなたのこれまでの人生で一番の「逆境」といったらなんだろうか。大小さまざまな逆境はあっても、何事もなく平穏無事な人生を生きてきた人はいないだろう。仕事で取引先に大迷惑をかけた、上司を怒らせてしまった、自分のせいで最愛の人と別れることになった…。誰しもいろいろな逆境が浮かぶはずだ。それらの中には、自分の人生が終わったような気分になるものもあっただろう。
そんな、人それぞれにやってくる「逆境」。これを乗り越えるためのノウハウがぎっしり詰め込まれているのが、『逆境の教科書』(集英社/刊)だ。逆境に陥ったときにどのように行動すべきか、どのように考えるべきかがまとめられた一冊である。
著者は、人間国宝が作った品々を展示している「人間国宝美術館」をはじめ、さまざまな事業を展開している山口伸廣さん。2015年には国際アートコンペティション「アートオリンピア」の創始者としてプロジェクトを統率。今年67歳になるが、精力的に新たなビジネスに取り組んでおり、現在手がける事業は上場企業を含めた十数社という一流実業家だ。
そんな山口さんが、なぜ『逆境の教科書』を執筆するに至ったのか? 実は山口さん自身、“もう再起は不可能だろう”、そう思われてもおかしくないような逆境に立たされながらも、それを乗り越えてきた経験の持ち主だからである。
■資産230億円を一夜にして失う!
山口さんの人生最大の「逆境」は、社長として年商100億円の建設会社を経営し、個人の総資産が230億円にのぼっていたときに訪れた。50歳に差しかかろうとする直前に起こった、大事件。なんと経理部長に会社を乗っ取られてしまったのだ。しかも、取締役も社員も大半が経理部長の側につくという四面楚歌状態。社内の人間だけでなく、取引先やロータリークラブ関係者など、交流のあった人たちも多くが彼から離れていった。
「誰かを殺したいと思ったのはそのときだけ」と本音を吐露する山口さん。裁判沙汰にもなり、個人資産は差し押さえられ、まさに人生のどん底だった。
しかし、山口さんはこのピンチをチャンスに変えたのだ。
成功の象徴だった自宅が競売にかけられたのを機に、山口さんは悔しさとともに「競売物件売買」ビジネスの可能性に気づく。どん底の中で見つけた一筋の光明が、山口さんを突き動かした。もちろん、ビジネスを軌道に乗せるまでには相当な試行錯誤があったが、苦難を乗り越えついに再起を果たすのである。
どん底から再起を果たすことができた理由。それは、それまでの人生で経験してきた数々の失敗から「逆境を乗り越える方法」を学んでいたからだ。高卒で建設会社に就職し、20代で独立。しかしあえなく失敗し、2度目の独立でなんとか事業を軌道に乗せるという紆余曲折を経験してきた。失敗を重ねつつもそれを糧にし、生き抜いてきた山口さんだからこそ、人生最大のピンチを大きなチャンスに変えることができたのである。
■具体的に使えるノウハウが満載
ピンチのときにこそチャンスがあるものだが、そこから一歩を踏み出せるかどうかは、その人自身にかかっている。とはいえ、自分の精神力だけでは切り抜けられないときもある。むしろ「ガンバレ!」と自分を鼓舞することで、かえって自分を追い詰めてしまうこともあるのだ。
ではどうすれば逆境から抜け出せるのか? その具体的な方法が本書の中で語られている。手帳を使う5つのステップをはじめ、自分を信じる方法や逆境の時の考え方、そして行動パターンなど、山口さんだからこそ語れるノウハウばかりだ。「こんな逆境でも、考え方ややり方次第で乗り越えることができるのか」と、勇気付けられるに違いない。
どんな逆境でも必ず乗り越えられると山口さんは述べる。もし、逆境が立ちはだかったら、ぜひ本書を開いてみてほしい。そこを抜け出すためのヒントが書かれているはずだ。
(新刊JP編集部)
関連記事
・こんな社長が会社をダメにする 3つのタイプ
・“生きること”とは何か 『夜と霧』に学ぶ
・コンサルタントが指摘する「無謀な起業」
・「自分は悪くない」が成功を遠ざける
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。