教養がある人の話は聞いていて面白いし、いざというときに救いになるような一言をもたらしてくれたりもする。
一方で仕事や普段の日常生活において役に立つ機会が少ないのでは? と考える人もいるだろう。しかし、その考え方は古い。教養はビジネスパーソンに欠かせないものだ。
『東大教授が考えるあたらしい教養』(藤垣裕子、柳川範之著、幻冬舎刊)は、本質的な教養とはどのようなものかを解説し、東京大学でどのような授業が行われているのか、ビジネスの場での今日の活かし方、教養の身につけ方を紹介する一冊だ。
よく知識をたくさん持っている人は教養があると言われるが、本書に言わせると「本質から外れている」という。
教養人になるためには、別の必要な要素がある。その前提は思考習慣を持つこと。知識や情報を丸のみにせず、疑問を持って自分の頭で考える。そして、異なる考えや意見を持つ人同士が建設的に議論し、思考を発展させていく行動原理が「教養を身に付ける」ということだ。
では、この教養を具体的にビジネスに役立てるにはどうしたらいいのか。
それは、さまざまな分野に関心を持ち、そこからヒントを得て、課題の解決策に結びつけていくということだ。多様性の時代、異文化をいかに組み合わせてアイデアを作っていくかはビジネスにおいて求められる能力でもある。そこで教養が必要なのだろう。
ただ、気をつけなければいけないのは、異文化の人の価値観について、容易に「わかっている」と考えないことだと本書。「根本的にはわかりあえない」ということを意識して、それでも諦めることなく、真摯にコミュニケーションをとる姿勢が大切なのだという。
教養があるというのは、雑学などを披露して会話や営業がスムーズになるということに使う能力だけではない。本書のいう「あたらしい教養」は、ビジネスをする上で重要な役割を果たすものなのだ。
本書をきっかけに、教養とは何かを考え、ビジネス、人生に役立ててみてはどうだろう。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。