“下書き”レベルのシンプルさでOK
参考までに、私がネット依存に関する講演で実際に使っているスライドのひとつを以下に示したい。日本のプレゼンに慣れた人が見たら「下書きか?」と思うだろう。しかし、これで実際によく聞いてもらえているのだ。
なお、このスライドで伝えたいメッセージは、「酒、たばこ、薬物は禁止といった、『対象の摂取を一切絶つ』という手段が取られるが、ネットを絶っては現代生活は成り立たない。ネットは『禁ネット』ではなく『節ネット』になるのが、その難しさだ」というものだ。
そうなると、ついスライドのタイトルに「節ネットと禁ネットとは?」などと書いて、下に箇条書きで「禁ネットが難しい理由(1)、(2)、(3)……」とつらつらと綴りたくなるのだが、それをすると「読まれて」しまうのだ。
それなら、せめて「禁ネットより節ネット」と書いたら、と思う人もいるかもしれないが、それでも読まれてしまう。ポイントは「文にしないこと」なのだ。あえて単語の羅列にすることで、「何が言いたいんだろう?」と話者を見てもらえるようになる。
さらに、このスライドを見て「なぜ、もともとパワポに備え付けのカラフルな背景を使わないのか?」と思う人もいるだろう。私自身、背景のないパワポなんて、と最初は使っていたが、先生たちによく「背景がうるさい」と言われた。これも、多くの日本人がカルチャーショックを受けるところだと思う。ただマイクロソフトのデザイナーがつくってくれた背景を付けるだけで、「やった気」になってはいないだろうか。
プレゼンを聞いていると眠くなる最大の理由
「聴衆に話者を見てもらう」がプレゼンの基本中の基本だ。よって、「映写資料に文字いっぱい」はダメなのだが、さらにお話にならないのが「映写の資料をそのまま配布資料にすること」だ。配ったが最後、全員が映写した画面ではなく、手元の配布資料を見てしまう。プレゼンで居眠りしてしまう人が多いのも、手元の配布資料を見てうつむく姿勢が長時間続くからではないだろうか。
もちろん、中には内容が複雑や難解であるなど、配布資料が必要なケースもあるだろう。ただ、そうした内容でもないのに、映写資料を1から10まですべて印刷したものを律儀に配ってはいないだろうか。
配布資料がなくても、伝え方次第で相手に印象を残すことはできる。
『節ネット、はじめました。 「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す』 時間がない! お金がない! 余裕もない!――すべての元凶はネットかもしれません。
『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。 会話術を磨く前に知っておきたい、ビジネスマンのスーツ術』 「使えそうにないな」という烙印をおされるのも、「なんだかできそうな奴だ」と好印象を与えられるのも、すべてはスーツ次第!