アスキー・メディアワークス
方程式で表した数学の問題よりも、ストーリーで表した問題の方が、生徒にとって学びやすい。
これはアメリカのある教育学者が、代数の授業をはじめて受ける生徒に行った調査の結果だ。方程式だけではなく、ビジネスにおいてもこれは当てはまるのではないだろうか。
『ビジネス寓話50選』(博報堂ブランドデザイン/著、アスキー・メディアワークス/刊)では、これからのビジネスや働き方についての新しい知恵や未来の兆しを感じさせる50の寓話を「はたらく」「売る」「つくる」「動かす」「つながる」の5つのテーマに分けて、解説する。
3人の石切り工の話がある。
なにをしているのかと訊かれたとき、
第1の男はこう答えた。
「この仕事で、暮らしを立てているんだよ」
第2の男は、槌を振る手を休めずに、こう答えた。
「どんな石切り工にも負けない、この国で最高の石切りの仕事をしているんだ」
第3の男は、きらきらした目で、こう答えた。
「大寺院を、つくっているんだ」
(ピーター・ドラッカー『マネジメント』【中】)
ピーター・ドラッカーは、この話を次のように解説している。
「第3の男こそマネジメントの人間である。第1の男は、仕事で何を得ようとしているか知っており、事実それを得ている。だが、マネジメントの人間ではない。問題は第2の男である。スペシャリストは、単に石を磨き脚注を集めているにすぎなくとも、重大なことをしていると錯覚しがちである。専門能力の重要性は強調しなければならない。しかし、それは全体のニーズとの関連においてでなければならない」
どんな仕事に携わっていても、目の前の作業だけを見つめるのでなはく、仕事の本質を見据えられるのがマネジメントの人間だということを、ドラッカーがこの寓話を通じて伝えたいことなのだろう。
企業のトップや経営陣だけでなく、一社員も本質的なビジョンを共有することが大切なのだ。
このようにストーリー仕立てであれば、大切なことがつかみやすいいのではないだろうか。本書にはこうした寓話が50、掲載されている。
ビジネス書や自己啓発書からダイレクトに知識を得るのもいいが、寓話から知識を得るというのも少し遠まわしの表現であるだけに、あれこれ自分で考える作業があっていいのかもしれない。
(文=新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。
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