結婚できない男女に共通する“無意識のうぬぼれ”…「身だしなみ軽視」「現状維持」
“恋愛・婚活をマーケティングしてみよう”とのテーマで、以前、本連載で『交際・結婚相手に“出会える”ためのマーケティング活用術』という記事を掲載した。
2020年の幕も開け、「今年こそは良縁を」と考える人も多いということで、立教大学経営学部教授の有馬賢治氏の解説のもと、今回も婚活マーケティングの基礎の基礎をお送りしたい。前回は“出会うための下準備”についての話だったが、今回は恋愛におけるBtoB(法人を相手に商品やサービスの提供)とBtoC(消費者に対してのビジネス)の意識の切替え方ついて考えていこう。
市場調査はBtoBの意識で
「BtoCの場合、マス(大衆)に向けて商品を展開するという性質上、広くわかりやすく商品の魅力をアピールする必要があります。知人などの仲間内で社交的に接する場合には、この意識でも自分を気に入ってもらえる人が出てくる可能性は高いでしょう。しかし、これが1人の結婚相手となってくると、意識をBtoBに切替えなくてはなりません。
つまり、マスを相手にするよりもさらに深い話を展開して、相手のことを知り、自分のことを知ってもらう必要があるわけです。ここで話が深まらないのであれば、どちらか、あるいは両方の意識の中で結婚相手として見ていないと考えた方が無難でしょう」(有馬氏)
深堀りしたトークテーマの具体例のひとつとして“家族の話題”が挙げられるという。
「“将を射んと欲すれば先ず馬を射よ”ということわざがありますが、結婚を意識した相手だとすれば、家族付き合いも重要なテーマになってきます。そして、先方の家族のことを知ることは、相手の深いバックボーンを知ることにもつながります。法人に商品を買ってもらおうとした場合、意思決定は窓口の担当者だけではなく会社全体を理解しておくことが必要になるのと同じで、婚活も相手の家族を知ることが市場調査のポイントになってくるのです。互いの家族に関する話題が自然にできる相手とは、後々スムーズにコミュニケーションが取れる可能性が高まると思います」(同)
パッケージングはBtoCの意識が必要
続いて商品の包装にあたるパッケージングについて。こちらは一転してBtoCの意識が大事だという。
「パッケージングは、恋愛においては身だしなみが相当します。消費者は商品やサービスの購入に際して、パッケージの汚れや店構えのきれいさで購入の判断をする傾向にあります。それと同じことが交際相手の印象にも求められているという自覚は必要です」(同)
“見た目よりも中身で勝負”とはよく聞くセリフだが、「それは自己のうぬぼれに過ぎません」と有馬氏は一蹴する。確かに、中身に問題がなくても包装が汚れているのであれば、同じ商品でもよりきれいな包装のモノを手に取るだろう。
「反対に華美すぎるのも問題です。もちろん派手好きの人もいるので一概には言えませんが、派手すぎるバッグや服飾品を持ち歩きたくない人は一定数います。自分を商品に置き換えるのであれば、一緒にいることに気が引けるように感じられては話が進みません。相手の気持ちを意識して身だしなみを整えるのは交際に際する最低限のマナーです」(同)
清潔感とシンプルさ。これがマスに訴求するには大事な要素だが、婚活に発展させるならばこれだけでは不十分。
「長い付き合いを目指すのであれば、たとえばデートのためにちょっと高価なジャケットやブラウスを新調するなど、自分にも相手に対しても少し背伸びをするくらいの意識を持って接するべきでしょう。なぜなら、いつも通りでいいとの思い込みは、相手に対して最初から妥協をしていることを意味するからです。また、次第に手を抜いて良いというわけではなく、次回に会う時の‟リピート購買”を期待されるように努力する必要があることも意識した方が良いでしょう。
自己を売り込むことが課題である以上、現状維持の意識はむしろマイナスです。次期の目標を問われて現状維持を口にする経営者はいません。現状維持が前提だと、従業員は昇給できませんし、会社としては赤字体質になってしまうからです。ですから婚活にも上昇志向が必要で、少なくともデートや出会いの場へ赴く際は、ワンクラス上の自分をアピールする気持ちでいるべきです。そうでないと、自分に対してどんどん妥協が大きくなり、相手には魅力不足と取られてしまう可能性が大きくなってしまいます」(同)
婚活という市場において自分は商品であり、ある意味で企業といえる。自社商品や会社の方向性が初期段階から妥協をしているようであると、そのぞんざいな気持ちは知らず知らずのうちにどんどん大きくなり、いよいよ買い手がつかなくなってしまう。理想の相手を求めるなら、まずは自身の恋愛PDCAを確実に回す意識が大切なようだ。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)