結婚相談所から各種の婚活パーティ、マッチングアプリまで、その市場規模は1000億円以上ともいわれる婚活ビジネス市場。しかし、一方で、今の日本は「結婚氷河期」に陥り、巷には結婚できない男女があふれている。
背景にあるのは、過酷でシビアな婚活ビジネスの「市場原理」だ。少し前までなら、より条件がよくスペックの高い相手を求め、いつまでも婚活を続ける人も多かったが、現在ではそんな余裕すらないという。
30代後半の男女で結婚できるのは1%?
国勢調査から算出すると、2005年に20~24歳だった人が5年以内に結婚した確率は女性で28.4%、男性で21.6%。ざっくりいうと、20代なら4人に1人が結婚している計算だ。しかし、当然、この成婚率は年齢が上がると大きく下がる。35~39歳の男性が5年以内に結婚した確率は1.4%で、女性はわずか1%。30代後半になると、100人に1人しか結婚できていないのだ。
こうした現状をカバーするために、市場が拡大しているのが婚活ビジネスである。一昔前と比べると、結婚相談所に登録したり、婚活パーティに参加したりすることへの抵抗感も少なくなり、適齢期の男女にとって、婚活はもはや当たり前の行動となってきた。
そして、この婚活ビジネスの拡大に伴って出てきた弊害が、相手を選り好みし、もっといい条件の人を探し続けてしまうことだった。ところが、それも一昔前の話にすぎないという。婚活ビジネス事情に詳しい社会学者の山田昌弘氏は、「選り好みするような時代は、とっくに終わっていますよ」と語る。
「私が、そういう人たちに対して『もっといい人がいるかもしれないシンドローム』という言葉を使ったのは20年前。すでに、そんな自分本位な相手選びをやっても無駄だということが浸透しています。現在は、『婚活したぐらいではなかなか結婚できない』という深刻な『結婚難』の状態。きちんとした婚活ビジネスをやっているところほど、条件のいい人などいないし、利用者もそれをよくわかっています」(山田氏)
「もっといい人」など、どこにもいない。それが婚活ビジネスの現実なのである。それにもかかわらず、「高い料金を払っているのだから、条件に合ったいい人がいるはず」という利用者は後を絶たない。
「女性の理想が高くなれば、成婚率が下がる。そのため、婚活サービスを提供する側は、『高いお金を払って入会した以上は“年収が高い人”とマッチングしたい』という利用者の理想をクールダウンさせようとします。言い換えると、女性の理想をいかに下げさせるかが、婚活ビジネスの最大のポイントなのです」(同)