コンサル業界の中途採用、知られざる選考の全貌と対策…面接では何を問われるのか?
昨今、日本国内の各業界では不況が叫ばれており、業績が低迷している業界・会社も多くあると思います。そんななか、前回の記事でも触れたように、コンサルティング業界では業績を伸ばし、変わらず拡大を続けている企業も多く、各社依然として積極採用を続けています。また、求職者様側の視点から見ても弊社(ムービン・ストラテジック・キャリア)への登録者数は毎年増加し続けている状況にあります。
今回は、そんなコンサルティング業界のなかでも特に根強い人気があり、また入社難易度も高い戦略系コンサルティングファームと総合系コンサルティングファームにフォーカスして、その中途採用の選考における概要や対策のポイントをお伝えいたします。
1.選考概要
コンサルティング業界の採用選考ですが、大きな流れとしては、(1)書類選考、(2)筆記試験、(3)面接という3つのフェーズに大別されます。ここでは、それぞれのフェーズにおける選考概要ならびに対策のポイントについてお伝えいたします。
1.1 書類選考
コンサルティング業界の選考は他業界と同じく、まずは書類選考から始まります。
1.1.1 どんな書類が必要なのか
履歴書と職務経歴書の2点が必須であることが一般的ですが、ファームによっては志望動機書の提出を求められることもあります。
1.1.2 誰が選考するのか
人事採用担当者が書類選考を行うのが一般的ですが、ファームによっては現場のコンサルタントにも書類が届き、実際に一緒に働くことになるプロのコンサルタントが厳しい目線で選考することもあります。
1.1.3 何を見ているのか
書類選考時に見られているのは、主に以下の4点が中心です。
(1)学歴
求められる水準は会社によって異なるものの、コンサルティング業界においては学歴も重要な選考要素の1つとなります。その理由は主に2つあります。
1つは、「コンサルタント適性との相関」です。プロフェッショナル職であるコンサルタントには高い論理的思考力や問題解決能力が求められます。もちろん学歴とコンサルタント適性が絶対的に正比例するわけではありませんが、両者には一定の相関があると考えられているため、高学歴であるということは加点要素となります。
もう1つは、いわゆる「箔」です。コンサルティング案件ではクライアント企業の上層部に提案をすることが多く、その際に自社の担当コンサルタントたちの略歴を紹介します。クライアント企業では解決が難しい問題をプロフェッショナルとして解決するという立場上、また、企業の上層部の方は一般的に高学歴の方が多いという背景から、担当コンサルタントの学歴が高いほうが提案にも箔がつくというのが1つの理由です。
(2)職務経歴
職務経歴と一言でいっても、さまざまな観点があり、前職も含めて歴代の会社においてどの会社で、どの部署で、どんな業務を担当しているかといったことはもちろんのことですが、どんな考え方でどんな取り組み方をしてどんな成果をあげてきたのかという点までしっかりと見られます。
上述の(1)学歴や、後述する(3)年齢、(4)英語力に関する記載を見るとおわかりの通り、短期間ではどうにも変えられない項目が多いのに対して、表現の工夫によって評価を変えることができる唯一ともいえる項目が、こちらの職務経歴になります。よって、対策編では、この職務経歴のアピールにおけるポイントについてしっかりとお伝えいたします。
(3)年齢
ファームによってメインターゲットとしている年齢層は異なりますが、一般的には20代後半~30代前半あたりがボリュームゾーンであることが多いです。ただし、新卒採用を行わないファームでは第二新卒人材を積極採用したり、自社にはない明確な強みを持つ人材を求める企業などでは30代を積極採用するファームもあります。40代ともなると、極めて高い親和性や、他ファームでのコンサルティング経験が求められます。
(4)英語力(特にグローバルファームの場合)
特に大企業の支援をメインにしているコンサルティングファームの場合、クライアントとなる大企業がグローバル企業であることが多いため、必然的にグローバルなコンサルティング案件を取り扱うファームが多くなります。英語をまったく使わない案件も多数あるので、英語が堪能でなくても活躍の場はもちろんありますが、担当できる案件が少し限定されてしまうため、英語力がビジネスレベル以上である場合には加点要素となります。稀に、ビジネスレベル以上の英語力が必須要件となっているファームもあります。
1.2 筆記試験
無事に書類選考が通過となった場合、次に筆記試験が行われることが一般的です。ファームによっては筆記試験がなかったり、面接フェーズの中盤や終盤で筆記試験が実施される場合もあります。試験タイプはSPIや玉手箱、GABなどが一般的で、ファームによっては独自問題を出題する場合もあります。選考のポイントは当然ながら「合格水準に到達しているか否か」ですので、がんばって試験勉強をして高い点数を取るしか通過の方法はありません。そうはいっても、解く際に注意すべきポイントはありますので、それについては後述いたします。
1.3 面接
1.3.1 どれぐらいあるのか
面接の回数ですが、総合系コンサルティングファームであれば3回程度で終わることが一般的です。戦略系コンサルティングファームの場合はファームによって異なり、3回程度で終わる場合もあれば、5、6回やそれ以上続く場合などもあります。
1.3.2 誰が選考するのか
序盤は現場のマネージャーランク(30歳程度)~シニアマネージャーランク(30代後半程度)の方が面接官を担当することが多く、選考が進むにつれて面接官のランクも上位になっていきます。最終フェーズになるとパートナーランク(=事業部長、役員クラス)の方が面接官を務めることが多いです。
1.3.3 何が聞かれるのか
これさえ準備しておけば大丈夫といったものはもちろんありませんが、具体的な質問としては、
・なぜコンサルタントになりたいのか
・コンサルタントになって何がしたいのか
・現職の経験から何が活かせるのか
・現職でどんな事を考えながら仕事をして、どんな工夫をしてきたのか
・自社の課題は何か
といったことがよく聞かれます。また、戦略系コンサルティングファームではケース問題といわれる問題がよく出題されますが、ここではその詳細については割愛させていただきます。
1.3.4 何を見ているのか
上記のような質疑をする中で、面接官は大きく3つ、(1)パーソナルスキル、(2)業務スキル、(3)プロフェッショナルマインドを主に見ています。
(1)パーソナルスキル
ロジカルシンキングやコミュニケーションスキルに代表されるような、いわばコンサルタントとしての土台の部分であり、「情報を正確にインプットし、構造的・論理的に整理・考察し、相手にわかりやすく伝える」といった一連のプロセスを遂行する総合的なスキルを指します。
(2)業務スキル
上記のようなコンサルタントとしてのパーソナルスキル、すなわち土台の上に乗っているもので、業界や業務領域などの観点で具体的にどんな知識があるのかといったスキルを指します。
(3)プロフェッショナルマインド
コンサルタントという職業はプロフェッショナル職ですので、上記のようなスキルの有無だけでなくマインド面での適性もチェックされます。
今回は以上となります。次回は、各選考プロセスにおける対策のポイントについてお伝えします。
(文=成塚健史/ムービン・ストラテジック・キャリア)