突出した才能がひしめき合うプロ野球の世界。
近年では中学生にして150キロ近いボールを投げ、強豪高校がこぞってスカウトに押し寄せる「スーパー中学生」が話題となっている。
たしかに、後にプロの世界に入るような選手は、アマチュア時代から突出した能力を持っていた早熟なタイプが大多数。しかし、そうではない人もいる。
■「松坂世代」の数少ない生き残り ソフトバンク和田がプロで生き残れたワケ
福岡ソフトバンクホークスの和田毅投手はそんな一人だ。
甲子園こそ出場したが、当時の球速は130キロそこそこ。多くは120キロ台だったと記憶している。全国から腕に自信のある者が集う甲子園で、取り立てて目立つ存在ではなかったし、少なくとも将来プロ入りするような選手とは思わなかった。
だからこそ早稲田大学2年時に台頭し、東京六大学で三振の山を築き始めたのには驚いた。投げるボールが、高校時代とはまるで別人だった。
もともと僕は「どこにでもいるふつうの野球少年」だった。
『だから僕は練習する 天才たちに近づくための挑戦』(ダイヤモンド社刊)で、和田投手本人も、自分が取り立てて早熟でも、能力に恵まれていたわけでもないことを認めている。
それでもプロ入りし、39歳となる今も現役を続け、これまでに日米通算で135勝を積み上げるまでの投手になれたのは、本人曰く「練習のたまもの」、もっといえば「考えて練習すること」だという。
「練習はウソをつかない」と言われるが、ただがむしゃらに練習すればうまくなるのかというと、そうでもない。子どもの頃から「天才」と呼ばれ続けてきた選手が集うプロ野球の世界ではなおさらだ。
では、「考えて練習する」というのは、具体的にどういうことなのか。
この点について和田投手は、本書の中でいくつかの意見を述べている。
たとえば、あらゆる練習メニューについて「なんのための練習なのか」を明確にしておくこと。これは、それぞれの練習の意味を理解しないまま、やみくもに量をこなしても、なかなか実力はつかない、ということだろう。
そして、こうした「目的がはっきりした練習」を習慣化すること。「目的×習慣」がいい練習を作る、ともしている。
こうして言うと簡単なことのように思えるが、質の高い練習を何年も続けることの困難さは想像に難くない。プロ野球選手として結果が出るようになれば、慢心が生まれる隙もあるだろう。
和田投手の場合は、松坂大輔投手(現・西武ライオンズ)、藤川球児投手(現・阪神タイガース)など、自分よりも素質に優れている選手が周囲に多くいたことが、謙虚に練習し続けるうえで役立ったようだ。
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どう考えても自分より優れた相手と競わなければならなかったり、訓練したことが結果に結びつかなかったりするのはプロ野球選手に限らない。どうやって自分を成長させてきたか、どんな風に自分を磨いているのかについて、本書で語られる和田投手の言葉は、どんな人にとっても学びは多いはずだ。
(山田洋介/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。