2020年は私たちの働き方にとって大きな転換の年になりそうだ。それを促しているのが、新型コロナウイルスの流行だ。時差出勤や在宅勤務を命じる企業が相次ぎ、各企業で感染の抑止対策が打たれている。
ただ、この状況下で悩みどころなのが営業職だろう。
取引先との打ち合わせやコミュニケーションをどうすべきか。しかし、課せられるノルマは変わらない。SNSでもそうした悩みがつぶやかれている。もしかしたら、私たちは営業の方法を根本から変えるタイミングにいるのかもしれない。
■「展示会営業」のノウハウは通常の営業活動でも使える
展示会営業コンサルタントの清永健一氏は、著書『展示会のプロが発見!儲かっている会社は1年に「1回」しか営業しない!』(ごま書房新社刊)で、同じ業種の企業が一堂に会する展示会に自社のブースを出展し、そこから顧客を獲得する営業手法を提案する。
現在、新型コロナウイルスの影響によって中止になる展示会は多い。
しかし、清永氏が提唱する展示会営業の手法には、こうした状況だからこそ試したいものが多い。そのいくつかを紹介しよう。
(1)商品の売り込みではなく、相手の課題を解決する営業を
本書では、展示会での目を引くブースの作り方を伝授しているが、ここで書かれている清永氏の手法は、資料や通常の商談、そして、自社アピール動画などにおいても活用できるものだ。
例えば自社が売りたい商品を売るのではなく、相手の課題を解決する形で営業をする。相手の目を引くキャッチコピーを作る。記憶に残るための体験アトラクションの仕掛け方など。展示会のみに限らず、応用可能だ。
また、清永氏は展示会に赴き、企業のブースを体験しながら紹介する動画を制作。自身のチャンネルで公開しているが、このように自社をアピールする動画を作ってもいい。動画は体験を伝える格好のメディアだ。
(2)これまで獲得した名刺をいかに活用するか
これまで交換してきた名刺の中には、反応が前向きだったものの「今はまだ必要ないな」「検討する時期になったら連絡します」と断られた相手もいるはず。こうした相手を清永氏は「そのうち客」と呼ぶ。展示会で獲得した名刺のうちの5割がこの「そのうち客」となるという。
そうした見込み客の掘り起こし策として、清永氏は継続的な情報提供をすすめている。例えばメルマガ(メールリストへの一斉送信)がその手法の一つだ。
メルマガは特定電子メール法によって相手の承諾なく送ることはできないが、名刺交換している場合は例外となる。もちろん、相手が嫌がる可能性もあるので、受信拒否をできるようにするなどの配慮は必要だが、見込み顧客のためになる内容を提供し、良いコミュニケーションを続けていくことで、「ちょっとあの会社に」という選択肢の一つに選ばれることになるのだ。
清永氏は本書の中で、通信速度が超高速になる5G時代を見据えて、動画で情報提供することも勧めている。
(3)確実に成果を出しつつ、モチベーションを高めるための目標設定方法
清永氏は展示会営業において、出展することが目的にならないように「売上●万」「受注〇件」など、目標数値を定めるべきだと訴える。ただ、確かにこれは必要なことだが、逆にノルマに雁字搦めになってしまうことも。
そこで清永氏が提案するのが「ゲーム化」だ。その後の受注につながる行動をKPIに定め、そのKPIを達成するための動きをゲームにしてしまうのだ。例えば名刺獲得枚数なら「名刺コレクションゲーム」、案件化なら「案件化レース」といった具合となる。
実はこの目標設定とそこに向かうゲーム化のプロセスは、普段の営業活動にも取り入れることが可能だろう。「プロセスごとの目標値を設定する」「最終的に得たい成果から逆算する」というルールをもとに、やり方の部分にゲーム的な要素を入れるのである。ノルマに追われてモチベーションが落ちがちな社員にも効果があるはずだ。
■それでも、やはり展示会営業は効率がいい
展示会の効率の良さは本書を読めば一目瞭然だろう。
清永氏いわく、展示会への出展はいわば「お祭り」。そこに、普段溝が生まれがちな様々な事業部の人間が参加することによって社内融和の効果が期待できる。
例えば管理部門の人間でも、いつもなら顔の見えない顧客と接することで、自社が社会でどのように役に立っているのかを実感することができる。また、出展内容を通して会社のビジョンを見つめ直す機会を得るので、参加したメンバーの目線が揃う。採用などにも活用することが可能だし、他社ブースを見ることで新たなアイデアがひらめくこともあるだろう。
今は、展示会の中止が相次いでいるが、新型コロナウイルスの流行が終わり、日常が戻ったときにはこうした営業手法を考えてみるのもいいのかもしれない。
『展示会のプロが発見!儲かっている会社は1年に「1回」しか営業しない!』は展示会営業のノウハウを一から教えてくれる一冊。中小企業にとって、取り入れるべき点はたくさんありそうだ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。