新型コロナウィルス流行によって、私たちのビジネスの仕方は大きく変わろうとしている。そして、各社がリモートワークを推奨し、ミーティングも実際に顔を合わせるのではなく、ZoomやSkypeなどを使ったリモート会議に移行するなど働き方も変化している。
こうした変化は、新しいビジネスモデルを生み出すきっかけになるものだ。
展示会・見本市を活用した営業方法を提唱し、中小企業の支援を行っている展示会営業Rコンサルタントの清永健一さんは、強力な営業ツールの一つとして動画によるインターネット展示会の活用を推進している。
実は3月1日に『展示会のプロが発見! 儲かっている会社は1年に「1回」しか営業しない!』(ごま書房新社刊)を上梓したばかりの清永さん。新型コロナウィルスで展示会が軒並み中止となっているこの状況でも「展示会営業」の手法は通常の営業活動でも使えると言い切り、その上で新たな営業方法を提案する。
ここでは、本書の内容にふれながら、このような状況下でも忘れてはいけない営業の本質について清永さんにうかがった。
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。
■仕事をしている意味、感じていますか? 営業の本質に迫る
――3月に上梓された新刊『展示会のプロが発見! 儲かっている会社は1年に「1回」しか営業しない!』について伺います。今回で清永さんにとって6冊目となる本ですが、最も読んでほしかった部分はどこですか?
清永:2つありまして、まずは展示会に出展するならば会社の売上アップに貢献してほしいということです。ただ出展するだけではなく、売上の増加に直結させましょう、と。これは以前からの変わらないメッセージですね。
もう1つが本書の特徴で、展示会を上手く使えば売上が伸びるのは当然で、それ以外にもいろいろなプラスの面があるということです。それは最終章の「ムダな営業をしないことが会社にもたらす13個の幸せ」にまとめているのですが、例えば長期ビジョンを持つことができたり、部門間の垣根を越えてセクショナリズムを打破できたり、顧客視線の思考力が強化できたり、セルフイメージが高まったり、優秀な人材の採用につながったり、ということがあります。
展示会は、上手く活用すると、こうした売上アップ以外の課題をも解決するきっかけにすることができます。そうしたことを本書では踏み込んでお伝えしています。
――「1年に1回しか営業しない」というタイトルの言葉は強いなと。
清永:自分でも強い言葉だなと思っています(笑)。展示会出展にきちんと取り組めば、それくらい効果を発揮できるんだよということですね。無理な営業で利益が出ない案件を受注してしまったり、無茶な営業で営業パーソンを疲弊させて人材が定着しなかったりするくらいなら、展示会出展にリソースを集約した方がよっぽどいいですよと。
本書では「株式会社名井内(ないない)」という架空の企業を通して、プロジェクトチームの立ち上がりから展示会出展を経たポジティブな変化を書いていますが、まさにそういうことが事例として起きています。
――例えば、新規開拓のテレアポのみしかやっていないという営業だと、数をこなすことが目的化し、本質的にはクリエイティブではないように感じます。顧客と人間関係を築き上げていって、問題解決を促し、何度も仕事をもらえるようになるのが本質的な仕事ではないかと。展示会はそうした営業をするための入り口としてうってつけなように感じます。
清永:おっしゃる通りです。そして、私の展示会営業Rノウハウでは、展示会出展にあたってまず、自社が顧客に対してどう役に立てるかを考えるところから始まります。そこから成約に結びつくと役に立つ感覚を得られやすいんです。やっぱり顧客には喜んでほしいじゃないですか。
――確かに仕事をしている意味を感じられますよね。本書では「来場者の問題解決を支援する」というスタンスで展示会営業での商談に臨むことをすすめていますが、これは仕事をする意味を大きく感じられる方法だと思います。具体的にどうすればいいのでしょうか?
清永:まずは、社内で見込み客の悩みを想像して出し合ってみることです。次に、既存顧客に意見を聞いてみるとよいですね。
私は、展示会営業コンサルタントですが、クライアントの皆さんはみんな一様に売上アップだけに悩みを抱えているわけではないんです。採用や社内コミュニケーション、働き方の改善。今ならば新型コロナウィルスでどう舵を取ればいいのか、ということもあるでしょう。そうした問題にも対応できるツールとして、私は展示会の活用を提案するんです。だからこそ、問題解決になる。
最初の話に戻ると、自社で想像した課題って、自社商品を通して顧客を見た際の悩みばかりが出てくるんですね。でも、既存顧客に自社の商品をどのように使っているのか、どんな効果を発揮しているのか聞いてみると、それ以外の意見がたくさん出てくるんです。「意外にこういうことにも使えたよ!」みたいな声もあれば、「ちょっと使いにくいね」という声もあるでしょう。
つまり、商品が想定外の働きをしていることって結構あるし、相手がきちんと中身を把握していないまま商品を購入するケースもあって、その後全然使われていないパターンもあるんです。
――そうなると、アフターフォローが必要です。
清永:はい。なので、商品を購入していただいたら、3カ月後くらいにフォロー面談をしてみる。「どうですか?」と聞いてみる、そういう風にしていくことが大事です。もし「全然効果が出てないよ」と言われたら、一緒に悔しがればいいんです。「マジですか!わたしも悔しいです!」と。そして、「一緒に改善していきましょう」と言えばいい。共通の目標像を持ち、それを顧客とともに目指していく。上手くいってないからこそ、より踏み込む必要があるんです。
――確かにそうすると必要とされる営業になっていけますよね。
清永:そうですね。ただ、どの営業マンにもそういう会社って1、2社はあると思うんですよ。それを意識的に広げていくことが大事ですし、そういう関係を顧客と築きあげていくためのきっかけとして、展示会は最適なんです。
――清永さんは多くの中小企業をクライアントに持っていますが、近年、そうした企業の抱える悩みや課題について変化は見られますか?
清永:採用と人材の定着は悩んでいるところが多いですね。中小企業だと優秀な人材を採用するのは難しいという思い込みがあるようなんですが、そうとは限りません。
経営者が志をちゃんと持って、未来を語ることができれば、若くて優秀な人材を引き付けることができます。例えばFacebook社って20年前にはなかった企業ですよね。今、すでに会社があるだけでFacebook社よりリードしている。だから自社が20年後、Facebook以上に影響力のある企業になる可能性も0ではないんです。
経営者の皆さんには、前を見て大きな未来を描くということをしてほしいです。そのきっかけとして、部門横断的に力を合わせることができる展示会営業の手法は有効です。
――新型コロナウィルスで経済の冷え込みが懸念されていますが、これからどんなことに気を付ければいいと思いますか?
清永:この状況は仕方がないので、今できることをやるということだと思います。「なるようになる」、いや「なるようになる」だと他力な若干諦めが入ったニュアンスになるので、「なしたようになる」と考えたいですね。
新型コロナによって外出自粛となり、できないことも増えていると思います。ただ、だからこそ時間もあるわけで、そのタイミングで長期ビジョンを社内全体で考えたり、Zoomなどを使って訪問しなくても顧客や見込み客と対話できる仕組みをつくるとよいでしょう。
手前みそですが、私自身も展示会が軒並み中止になり、いろいろな中小企業の経営者の方から相談をいただくなかで、「新型コロナウィルスなんかに負けない! 中小企業 応援 WEB展示会プロジェクト」というインターネット展示会を企画しました。
――新しい時代の売り方、働き方に一気に舵を取るチャンスですね。
清永:そうですね。それに、みんなこの状況に困っていると思うんです。その中で、自社のリソースで解決できる困り事は何かを考えることも有効です。
私の顧客の中に刺繍業の方がいるのですが、あまった布を使ってマスクを作るとか、自分でマスクを作るための方法を指南する動画をアップするということをしています。世の中に役立つことですから、社員さんはモチベーションが上がりますよね。
こういう不気味さが漂う状況下では、人間って集まりたくなるんです。でも、集まることができない。だからこそ、自分に何ができるか考えることが大事なのかなと思います。
――最後に、中小企業の経営者の皆さんにエールをお願いします。
清永:下を向いても事態は好転しませんし、右往左往しても仕方ないです。今できることをしましょう。「なしたようになる!」そのために私にできることがあれば、ぜひお手伝いしたいと強く思います。
(新刊JP編集部)