突然だが「ダメな会社」と聞いてどんなことが思い浮かぶだろうか。
まず、業績が悪く赤字が続いている。
その業績不調によって従業員のモチベーションが下がり、「かつて業績が良かった頃」にはもう戻れないとはわかっているが、現状を変える気力もない。そればかりか、組織をいい方向に変えようという人物が出てくると、邪魔をして足を引っ張る者が現れる。
そして、経営者は会計や財務に疎く、会社のかじ取りができない。
『崖っぷち社員たちの逆襲-お金と客を引き寄せる革命──「セレンディップ思考」』(小島俊一著、WAVE出版刊)はこのような「ダメな会社」に突如投げ込まれた主人公が、窮地に陥っている会社を再生させていくビジネスエンターテインメント小説だ。
■やる気のない社員 数字に疎い社長 ダメ会社を立ち直らせるには?
勤めていた銀行から債権先である石川県の書店チェーン「クイーンズブックス」に出向を命じられた鏑木(かぶらき)は、リストラや店舗閉鎖によって貸付を回収するのではなく、あくまでクイーンズブックスの業績を回復させることを決断した。
クイーンズブックスで鏑木に与えられた役職は「専務」だったが、債務先の銀行から送り込まれてきた「専務」などクイーンズブックス側にとっては「刺客」も同然。社長をはじめ、各店舗の店長らに彼を歓迎するムードはまったくない。
各店舗を回り始めても「現場に口を出すな」というオーラをひしひしと感じ、社長にいたっては財務諸表をはじめから「自分には理解できないもの」とサジを投げている始末だ。
これでは業績回復は望むべくもない。鏑木は各店長からの反発を受けながらも組織の改革に着手するのだが、店長たちはそれぞれがなかなかの曲者。
・言うことにいちいち反発し、つっかかってくる店長
・マーケティング知識の重要性を訴えても「現場は忙しいから」の一言で勉強しようとしない店長
・業績不振を業界の商慣習のせいにして、現状を変える努力をしない店長。
・そもそもやる気を失っている店長。
そして、問題があるのは経営者も同じだ。
先代から経営を引き継いだ二代目社長は、ごくごく初歩的な会計の知識もなく、商品の「販売原価」は「売上÷仕入先への支払額」で算出すると思っている。
鏑木は彼らの反発にあいながらも、クイーンズブックスを変えるべく奮闘。その過程でビジネスに必要なマーケティングや会計、そしてマネジメント手法が解説される。
さて、ここで考えてみてほしい。
あなたなら、上で挙げた店長たちをどのようにポジティブな姿勢に変えるだろうか。そして、あなたは会計の知識を持たない社長に、正しい原価計算を説明できるだろうか?