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キリンビール、マス広告&大量生産と決別の歴史的転換へ…驚きのビールの店に客殺到

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キリンホールディングス社長の磯崎功典氏
 少子高齢化による人口減少、若者のビール離れでビール市場は2004年から15年まで11年連続で減少を続けている。今後も国内市場の回復が見込めないなかで、キリンビールは事業モデルの転換にカジを切った。準主力の「ラガー」は会員制SNSを活用した訴求に変更、主力の「一番搾り」に投資を集中させ全国9工場で「47都道府県の一番搾り」(5~10月)の製造発売に踏み切った。


 キリンビールの事業モデル転換の象徴が東京・代官山にマイクロブルワリー併設のクラフトビール店を開業したことだ。12年3月にキリンビール社長に就任した磯崎功典氏(持株会社・現キリンホールディングス<HD> 社長)の決断力が大きい。キリンをクラフトビールに向かわせたのは、セブン‐イレブンと連携、12年6月に発売したクラフトビール風の「グランドキリン」(330mlびん)がヒットしたことだ。

 これを機にキリンはクラフトビールへの関心を高めた。14年4月にはオンラインショップ「DRINX(ドリンクス)」を開設し、同9月には9年連続増収増益中のクラフトビール大手ヤッホーブルーイング株式の33.4%を親会社である星野リゾートから取得し業務提携した。ヤッホーの製造の4割を受託し、物流や原料調達で連携する一方、「楽天市場」に出店する通販サイト「よなよなの里」の運営ノウハウを学ぶ。

 15年3月に横浜工場内にスプリングバレーブルワリー横浜(1~2階、テラス計200席)を開業させ、15年4月には東京・渋谷区代官山に「SPRING VALLEY BREWERY TOKYO」(略称:SVB、1~2階、テラス計215席)を開業した。

 キリンが市場規模の小さなクラフトビール市場に本格的に参入したのは、同社にとって事業モデル転換となる歴史的な出来事であった。SVBはマイクロブルワリー(小規模ビール醸造所)併設の体験型・参加型店舗だ。今年4月17日、開業1周年を迎えた。年中無休で年間来客数は約26万人を数えた。キリンはSVBと「47都道府県の一番搾り」をテコに大逆襲に打って出ようとしている。

年間40種類の新しいビールを開発


 SVBは3月末、メディア向けに開業1周年記念イベントを開いた。同社社長の和田徹氏は1年間の実績を誇ると同時に、今後の展開について語った。

「昨年4月に開業し、定番6種類の通年アイテムを発売。13種類のクラフトビールを開発・発売しました。折からのクラフトビール人気にも乗って年間の集客数は約26万人に上り、飲まれたビールの杯数は約80万杯、名物のビアフライト(定番6種類がミニグラスで全部飲める)は15万セット、来店者の6割が初体験でした。一方、クラフトビールがヤフーニュースなどで話題になった件数は1.3倍以上に増えました」