ビジネスジャーナル > 企業ニュース > キリン、マス広告&大量生産と決別  > 3ページ目
NEW
中村芳平「よくわかる外食戦争」

キリンビール、マス広告&大量生産と決別の歴史的転換へ…驚きのビールの店に客殺到

文=中村芳平/外食ジャーナリスト

 世界的には、ビールは下面発酵製法(ビール酵母は液面の下で活動)によってつくるラガー(Lager)ビールと、上面発酵製法(ビール酵母は液面の上で活動)によってつくるエール(Ale)の2つに分類される。ラガーは15世紀にドイツのミュンヘンで誕生した。夏場の気温が高すぎて仕込みがうまくいかず、冬場に仕込み、低温で「貯蔵=ラガー」したところ、高品質のビールができた。これがドイツからヨーロッパ、世界に広がった。

 19世紀に冷蔵技術が開発され、チェコのピルゼンでラガーをつくるのと同様の下面発酵製造、すなわち低温(10℃前後)で1~2週間ほど発酵させて、醸造すると「淡く透き通った黄金色で、すっきりした味わいのピルスナー」が完成した。これが現在世界で主流の「ラガー=ピルスナー」タイプのビールである。

 次にエールは冷蔵・冷却技術が完成する以前からつくられてきた上面発酵のビールである。エールはもともと寒冷でブドウ栽培に適さない地域で、ワイン代わりにつくられ発展してきた。常温(20℃前後)、短期間(4日間程度)で一気に発酵させる。ビール酵母は高温で活動するほど、「ワインのようなフルーティーな香りと豊かな味わいのビール」になるといわれる。上面発酵ビールは小規模な蒸留所で地域密着の多種多彩なビールをつくるところに特徴がある。

10年計画で新しいビール文化を創造

 これより先の今年1月、SVBは限定新商品「みかんエール」のメディア向け試飲会を開いた。この試飲会にキリンHD社長の磯崎氏が飛び入り参加した。というのも磯崎氏の神奈川県小田原市の生家はみかん農家であり、「みかんエール」に使う温州みかんを提供したからだ。磯崎氏は「みかんエール」のイベントで乾杯の音頭を取ったが、その際、みかんづくりの苦労話にうんちくを傾けた後、こう付け加えた。

「若者のビール離れでビールが売れない、市場の縮小傾向に歯止めがかからないと、嘆いていても何も始まらない。キリンはSVBを通じ、誰もが飲みたいと思うような魅力的なビールを次々に開発・販売し、新しい市場をつくり出していきたい」

 磯崎氏は日本のビール類市場が長期低落を続けてきたのは、ビール4社がピルスナータイプ(ビール市場の97%前後を占める)のビールで同質的な競争を続け、「消費者から飽きられて魅力を失ってきたことが大きい」と考えている。そんななかで急成長しているのがクラフトビール市場である。磯崎氏はSVBを通じて「みかんエール」のように「これまで飲んだこともないような魅力的なビール」を開発、提供し、ビール離れした若者の回帰を促し、女性など新しいビールファンを開拓していこうとしているのだ。

中村芳平/外食ジャーナリスト

中村芳平/外食ジャーナリスト

●略歴:櫻田厚(さくらだ・あつし)

1951年、東京都大田区生まれ。高校2年生の時に父が急逝し大学進学を断念、アルバイトして家計を助ける。都立羽田高校卒業、広告代理店勤務。72年に14歳年上の叔父(モスフードサービス創業者・櫻田慧)に誘われ「モスバーガー」の創業に参画。フランチャィズ(FC)オーナーなどを経て、77年に同社入社。直営店勤務を経て教育・店舗開発、営業などを経験。90年、初代海外事業部長に就任、台湾の合弁事業の創業副社長として足掛け5年半でモスバーガーを13店舗展開。1985年の株式上場と244店舗展開(16年9月末)、そして同社の海外展開の基礎をつくった。慧氏は97年にくも膜下出血で急逝、享年60。櫻田氏は98年社長に就任、14年会長兼社長に就任し、今年6月、社長を常務取締役執行役員の中村栄輔氏(58)に譲った。社長交代は18年ぶりのことだ。櫻田氏は中村氏に国内事業、新規事業を任せ、海外事業に全力を注ぐ構えだ。「モスバーガー」を世界のブランドにするという、夢の実現に向かって挑戦しようとしている。

キリンビール、マス広告&大量生産と決別の歴史的転換へ…驚きのビールの店に客殺到のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!