教養はビジネスの役に立つのか。それよりも、ビジネスに直結するような知識を身につけた方が良いようにも思える。
しかし、そもそも歴史を紐解いても、教養が純粋に「教養」として存在し、お金の問題と切り離されていたことはほとんどないという。
■お金儲けは人とのコミュニケーション
『お金持ちはなぜ、「教養」を必死に学ぶのか?』(加谷珪一著、朝日新聞出版刊)では、これからの時代に不可欠な儲かる教養の身につけ方を解説した一冊だ。
お金持ちになるには、自分自身について知ることも重要であり、それ以上に相手のこともよく理解しておかなければならない。このような時に、モノをいうのが人間に対する根本的な理解だ。
お金儲けは人とのコミュニケーション。だから、人はどのような存在なのかを問う「哲学」の知識が役に立つという。
では、どのように役に立つのだろうか? 本書の中身を見ていこう。
例えば、哲学の世界では、観念論と唯物論という対立軸がある。これは、人間の世界というものが、精神によって形作られているのか、物質によって形作られているのかという論争だ。
■成功者はうまく「哲学」を使いこなす
「観念論」では、精神が何よりも重要だと考える。仕事のインセンティブをどう捉えるかについても、実績を上げて満足感を得たい、仕事を通じて世の中に貢献したい、高い報酬を得たいなど、すべての人間に共通する基本的価値観が重要であり、現在置かれている環境はあまり影響しないと考える。
一方、「唯物論」は、先に物質的環境があり、その影響で精神が形作られるという考えだ。唯物論の立場に立てば、貧しい生活を経験した人は、経済的に成功したいという気持ちが強くなるという論理が成立する。
では、成功者はこの2つの理論をどう使っているのだろうか。
社会的・経済的に成功した人の多くは、状況に応じて観念論と唯物論をうまく使い分けているケースが少なくないという。成功者は自分が成功した理由として、観念論的理由を挙げることがほとんどだ。どうすれば何円儲かるという些末なテクニックより、お金や仕事に対する基本的な考え方、モチベーションに対する考え方など、価値観やマインドを重視する。
一方で成功者は、他人に対しては唯物論を前提として振る舞うケースがよくある。社員に対して、給料や昇進、降格など、環境を徹底的にコントロールした方が、よい成果を上げられると考える人が少なくない。また、成功者の中には、仏教的な価値観を持ち、「なるようにしかならない」と主張する人も少なくない。
本質的な教養を身につけることによって、成功する確率を一気に高めることができるという本書。
ここでは、哲学について紹介したが、社会学、経済学、数学、情報工学、哲学、歴史学の6つの章で構成されている。まず、教養を身につけることが、社会的・経済的に成功するきっかけとなるのかもしれない。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。