アニメ『おそ松さん』の大ヒットによって再びスポットライトが当たっている漫画家・赤塚不二夫。タモリをはじめ、彼からの深い影響を公言するエンターテイナーはあとを絶たない。
ザ・ブルーハーツやザ・ハイロウズなどを経て、現在はザ・クロマニヨンズで第一線に立つ甲本ヒロトもその一人だ。雑誌「Pen」の『Pen+ いまだから、赤塚不二夫』(CCCメディアハウス刊)の赤塚不二夫特集に登場。きれいなシェーポーズをとりながら、赤塚作品について語っている。
■「赤塚不二夫」と「ロックンロール」の相似点
1963年生まれの甲本にとって、赤塚作品は常に近くにあるものだったという。初めて出合ったのは小学生のとき。何もやりたくないし、将来やりたいこともない冷めた甲本少年にも、赤塚作品は笑いをもたらした。また、写真は苦手だったが「シェー」のポーズをして写っている写真もあるという。
「簡単に言うと『ぶっ飛んでる』の一言ですけど、パンクロックとかロックンロールに出合ったときの、リミッターが外れたような、“吹っ切れ感”に似ている気がします。『天才バカボン』が、それを体感させてくれたのかもしれない。ロックンロールをやりたいと思って、『どういう風にやろうか』って考えたときに、ある人はマイクを持って歌うし、またある人は、漫画を描くことでロックンロールをやる。ロックンロールは生活スタイルではないですからね。どんな生活をしていたってロックンロールはできるから。」(『Pen+ いまだから、赤塚不二夫』27ページより引用)
赤塚作品から感じるロックンロールについて語る甲本。ザ・ブルーハーツもザ・ハイロウズも、そしてザ・クロマニヨンズも、「ぶっ飛んで」いる。そのぶっ飛びの源泉には、『天才バカボン』をはじめとした赤塚作品があるのだろう。
「笑おうと思って読み始めたけど、凄いところまで行ってるなーって」(同27ページより)
「凄いところまで行っている」という甲本の言葉は、誰しもが共感するところだろう。
この特集の中で『秘密結社 鷹の爪』シリーズ作者のFROGMANは、鼻が大きすぎてコマ半分が鼻で隠れてしまう「なぜか見えない再会なのだ」や、見開き実寸大のバカボンのパパのコマから始まる「実物大のパパなのだ」といった、ギャグ漫画のセオリーを無視して創られた『天才バカボン』の作品を取り上げながら、次のように分析する。
「ギャグ作家として一番脂が乗りきっている時期に、突き抜けたことをやるというのは、相当な冒険だと思います。ですが、不二夫さんは突き抜けないとダメだった」(同62ページより引用)
赤塚作品の突き抜け具合は、もはや言葉に表すことすら難しい。クリエイターから見ても、赤塚不二夫という漫画家が歩んできた道は、ある意味で孤高であり、そして誰も真似できない領域なのだ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。