コミュニケーションの手段として、SNSやメールでやりとりが増えたものの、やはり面と向かって話すのは最も基本となるコミュニケーションだ。
しかし、SNSでやりとりが流暢にできても、実際顔を合わせてスムーズに会話できるというわけではない。『会話の天才』(ワニブックス刊)では、高倉健さんのインタビュー集を日本で唯一出版したノンフィクション作家・野地秩嘉氏が、ポール・マッカートニーさん、柳井正さん、孫正義さんをはじめ、3,000人を超える“超一流”と「会話」をするなかで得た技術やコツを、ポイントを押さえ、わかりやすく紹介している。
それぞれの分野の第一線で活躍する人たちは、仕事ができるだけでなく、会話の技術も卓越しているものだ。
■くりぃむしちゅー上田が「司会の達人」である理由
本書からお笑いコンビ・くりぃむしちゅーの上田晋也さんの話し方を紹介しよう。
『おしゃれイズム』『しゃべくり007』『Going!Sports&News』など、バラエティ番組やスポーツニュースで司会を務めている上田さん。野地氏はそんな上田さんのことを「司会の達人」と呼んでいる。
野地氏が、上田さん司会の番組にゲスト出演した際に、その達人ぶりを見たという。上田さんは、司会者でありながらあまり自分からは話さず、アシスタントやほかの出演者から野地氏にいい質問をするように促していたという。
ゲストの野地氏だけを立てるのではなく、出演者全員に出番を与えるように気を配っていた上田さんのおかげで、さまざまな意見が飛び交い、収録は大いに盛り上がったという。
おもしろい質問やいい質問は、できるだけほかの人にさせる。参加者に率先して話す機会を与える上田さんはまぎれもなく「上手な司会者」だ。こうした気配りの会話術は、会議で司会や進行役をやる際にも参考になるだろう。
■トヨタ自動車の張富士夫さんは「人に説明する達人」
トヨタ自動車名誉会長の張富士夫さんは、野地氏によれば「人に説明する達人」だという。
張さんは専門的な難しい話でも素人に伝わるように話すのが上手い。それは、もともと広報部で社内報の編集に携わっていたこともあるのだろう。
張さんの説明のポイントは、自動車の専門用語や「見える化」や「自工程完結」などのトヨタ語も極力使わないと野地氏。話している相手の知識レベルに合わせて、伝わる言葉だけを選んで説明する。こういった気配りが徹底しているのだ。
このような技術は実は難しい。とはいえ、普段の私たちの会話の中でも必要な技術となるだろう。
ここで挙げた二人の他にも、高橋みなみさんや峰竜太さん、秋元康さんの会話のテクニックが紹介されている。実際に会話をするとき、本書に登場する話の上手い著名人たちの会話術は大いに参考になるはずだ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。