スマートフォンやパソコンで、インターネットのサイトや記事など画面に表示されるネット広告。商品名が小さな画像と一緒に示されるバナー広告は、何度も同じ広告が表示されたり、消そうとしても消えなかったりと、邪魔な存在であり、嫌悪感を抱く人も多いだろう。また、ネット広告自体にもさまざまな問題がある。その背景にあるもの何なのか。
■インターネットによって広告の「棲み分け」が崩れた
『嫌われモノの〈広告〉は再生するか 健全化するネット広告、「量」から「質」への大転換』(境治著、イースト・プレス刊)では、メディアコンサルタントの境治氏が、WELQ事件、フェイク広告、アドフラウドなど、悪質なネット広告の闇から抜け出すために、生き残る広告主・代理店・メディアが進むSDGs/DX時代の広告の在り方を紹介する。
ネット広告には、記事と広告の区別がつかないようなバナー広告の表示方法や広告詐欺がある。また、広告を出す企業にとっても、悪質なポルノサイトや反社会的勢力が運営するサイトに広告が表示されてしまうと、後援していると見なされて、ブランドのイメージが悪くなってしまう。
このようなネット広告の問題は、「広告の棲み分け」が破壊されたことが原因で起こっている。広告の棲み分けとは、以下の3つがある。
1.広告とコンテンツ
PC上のウェブメディアでは、見出しを表示し、画像を配置して記事本文を読ませる。そのコンテンツの隙間に、広告がうまく配置され、記事を読むのに差し障りがないため、コンテンツと広告の共存はできていた。
しかし、スマートフォンでは、コンテンツと広告が同居するには、画面が小さすぎる。PCでは違和感のない広告が、スマートフォンでは違和感を抱くようになってしまう。どれが見出しや記事で、どれが広告かわかりづらいからだ。今までのようにコンテンツと広告がうまくすみ分けられなくなってしまったのだ。
2.広告と販促
広告は商品を認知させ、欲しいと感じさせるところまで。販促は実際に購入させることが求められていた。けれど、ネットの時代になると、ネット広告に求められたのは売上増であり、販促と同じ効果が求められるようになった。ネット上では、広告と販促の両方の役割を含んだ形で「ネット広告」が独自に進化した結果、広告と販促の区別は意味がなくなった。ネットによって、広告と販促の棲み分けが崩されたということだ。
3.ブラック広告の浸食
いかがわしい風俗やギャンブル、法外な利息を取る金融などのブラック広告は、一般の広告・販促の世界とは分かれており、混じることはなかった。ところが、インターネットの登場で、棲み分けの境界線が失われてしまう。
ネット以前には、どの広告をどのメディアに掲載するかは、広告代理店が提案し、広告主が承認して進めていた。けれど、大量のメディアへの掲載が自動化され、どの広告がどこに掲載されるかを誰も把握できなくなってしまったことで、どんなサイトにもブラック広告が出るようになってしまったのだ。
これらの3つの棲み分けの崩壊が、ネット広告問題の背景にあるのだ。
ネット広告の以前と以後で広告のあり方はどう変化したのか。広告の悪いところを解説し、あるべき広告の姿とは何かを本書では解説している。広告に興味がある、広告業界で働きたい、そんな人は本書を参考にしてみてはどうだろう。
(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。