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一人旅からツアー旅行への回帰 「旅行業界の異端児」と呼ばれた男の変遷とは

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※画像:『ようこそドラマチックジャーニーへ』(産業編集センター刊)

 旅は人生であり、希望であり、夢。人生で大切なことは、すべて旅で学んだ。

 こう述べるのは、『ようこそドラマチックジャーニーへ』(中村伸一著、産業編集センター刊)の著者の中村伸一氏だ。

 中村氏は旅行会社勤務を経て、1996年、34歳のときに独立し、旅行会社・エクスプローラ(日本語訳は探検家)を設立し、副称号を「地球探検隊」とした。旅行に参加した人を「お客様」ではなく「隊員」と呼び、いつの間にか中村氏も社長ではなく、隊長と呼ばれるように。手配して終わり、申し込んで終わりという旅行会社が多い中、中村氏は「旅は終わってからが始まる旅」をコンセプトに掲げた。隊員と一生付き合う関係を築きたいと思ったからだ。

 そう考えるきっかけとなったのは「トレックアメリカツアー」だったという。それまでは「一人旅こそが旅の完成形」で、グループツアーは避けていたという中村氏だったが、29歳のとき、アメリカ西海岸をめぐる9日間の現地発着ツアーのトレックアメリカツアーに参加したことで考え方が変わった。

■「旅行業界の異端児」を作ったある「気づき」とは

 世界7カ国から集まったツアー客たちと寝食を共にする毎日の中で、意思疎通が上手くいかないとき、常に「お前は何者か?」と問われている感覚だった。自分と真正面から向き合い、無知やもろさに気づかされる毎日だったという。

 そして、いろいろな人と関わり、仲間意識が芽生えるほど、自分以外の人の喜びが自分にも返ってくる。グループ旅行以外では得られない体験であり、誰と一緒に何ができるかを体験することが、旅の醍醐味であることに気づいた。

 この体験から中村氏は、現地集合・現地解散型、世界の仲間と旅をする「多国籍ツアー」と、日本の仲間と旅をする「大人の修学旅行」という旅のプランを世に送り出し、従来の旅行の概念を覆す企画の数々から、中村氏は「旅行業界の異端児」を呼ばれるまでになる。

 「多国籍ツアー」も「大人の修学旅行」も、「体験」するというより「体感」する旅。参加者とフラットな関係をつくり、その感情を共有すること、精神的報酬という共通の利益を得ることを目的とした旅だ。旅をきっかけに隊員同士につながりができ、「出会えてよかった」とお互いに感謝する関係が生まれ、日本を元気にすることが、地球探検隊、中村氏の最終目標なのだ。

 2018年、22年間経営してきた旅行会社を手放してフリーランスに。そして、2019年からは「地球探検隊」の中村隊長として、トークライブや執筆活動を行い、これまでの旅の経験を活かして「未来を創る旅社(ミラタビ)」をつくり、新しい旅の提供やイベント等も開催している。

 本書では、多国籍ツアーに参加し、人生が変わった若者たちも紹介している。コロナ禍のなかで、なかなか海外旅行にはいけない情勢ではあるが、いつか自由に旅ができるようになった時には思い出してもらいたい一冊である。
(T・N/新刊JP編集部)

※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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