筆者は今33歳だが、アラフォー世代の人たちとお酒を飲んでいると、「最近若いやつが部署に入ってきたんだけど、全然話が合わなくて…」と相談されることがある。
40歳のベテランがどのように若手に接するべきか?
そのヒントは意外なところにあった。2016年に広島東洋カープを25年ぶりのリーグ優勝に導き、MVPを受賞した新井貴浩が執筆した『撓まず 屈せず 挫折を力に変える方程式』(扶桑社刊)である。
本書では、新井がいかに困難や挫折に打ち勝ってきたのかが、体験として語られている。
徹底的にしごかれた新人時代、四番打者として起用されるも不甲斐ない成績しか残せず挫折した20代、猛烈なブーイングを浴びたFA移籍、ベテランとなってからポジション争いで後塵を拝したこともあった。
彼の野球人生は順風満帆だったわけではない。辛く苦しいことの連続だ。だからこそ、新井は球界一泥臭く、そしてドラマチックな選手の一人なのだ。
その一方でプロ野球選手会の会長を務めるなど周囲からの信頼が厚く、良き兄貴分としての一面を持っている。
2016年のカープの強さは、新井と引退した黒田博樹氏とアラフォーコンビが後輩たちを引っ張った。彼らを中心としてチームはまとまっていったのだ。では、新井はどんなリーダー像を目指していたのだろうか。
本書の第2章「教え、導くということ」から、そのリーダー論を紹介しよう。
■率先してコミュニケーションをはかる
新井は今年1月で40歳になった。カープでは最年長選手となる。しかし、カープの主力選手はかなり若い。主軸の丸佳浩や菊池涼介、田中広輔、野村祐輔はまだ20代、昨年ブレイクした鈴木誠也に至ってはまだ22歳の若武者である。
では、新井は若手たちにどんなアプローチをしていたのだろうか? 本書からこの言葉を引用しよう。
――シーズン中は、若手を連れてよく食事に行く。地方遠征に行った時も、その地方の名産を食べに、美味しい店に10人ぐらいで行くこともある。
食事に行くと、最初は冗談を言ったり世間話をしたりしているが、気付けば必ず、野球の話になっている。
(『撓まず 屈せず 挫折を力に変える方程式』P59より引用)
後輩たちとすすんで野球の話をする――プライベートだけではなく、試合中もよくコミュニケーションを取っていると新井は言う。
チームとしてのまとまりは、コミュニケーションによってもたらされる部分が多い。だから、世代が違うから話しかけにくいなどと言ってコミュニケーションを避けていれば、チームプレーはできない。
壁を作らずに、時にはすすんでバカなことを話したりもしているという。菊池がお立ち台で隣に立っている新井をいじるシーンを目にするが、それは新井と菊池の信頼関係があってのものだろう。こうした関係が築ければ自ずとチームはまとまっていくのだ。