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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

東芝が世界に誇った半導体事業、中国企業が買収するのか…トランプ米大統領が妨害も

文=湯之上隆/微細加工研究所所長
東芝が世界に誇った半導体事業、中国企業が買収するのか…トランプ米大統領が妨害もの画像1謝罪する東芝・綱川智社長(ロイター/アフロ)

 東芝が原子力事業で7125億円の巨額損失を計上する。その結果、2016年4~12月期は4999億円の赤字となり、昨年12月末時点で1912億円の債務超過になっていることが明らかになった。この危機的状況を打開するために、NANDフラッシュメモリ事業(以下、NAND事業)を分社化し、その新会社の新株を売却して、売却益で債務超過を回避しようとしている。その新会社は、「東芝メモリ株式会社(以下、東芝メモリ)」という社名に決まった。

 当初、新会社の株式売却は2~3割程度としていたが、2月14日の記者会見で東芝の綱島智社長は、「マジョリティ譲渡を含む外部資本導入を検討している」と発言した。つまり、東芝メモリを完全売却することもあり得るということである。

 これについて現在、筆者が大きな関心を持っていることが2点ある。

 ひとつは、どこが東芝メモリを買収するかということである。新聞などの報道では、10社ほどの候補が挙がっている。そのなかで、特に中国の紫光集団の動きに注目している。

 もうひとつは、もし仮に中国の紫光集団が東芝メモリを買収しようとしたとき、米国政府、特にトランプ新大統領がどのような反応を示すかということである。

 本稿では、東芝メモリの売却について、なぜ紫光集団に注目しているのか、なぜトランプ新政権の挙動に関心があるかを論じたい。

3次元NANDに参入する中国の紫光集団傘下のXMC

 現在、世界でNANDを製造しているのは、韓国サムスン電子(33%)、東芝と米ウェスタンデジタル(WD/34%)、米マイクロンと米インテル(24%)、韓国SKハイニックス(8%)の4グループである(カッコ内は16年の売上高シェア、図1)。

東芝が世界に誇った半導体事業、中国企業が買収するのか…トランプ米大統領が妨害もの画像2

 また、NANDはムーアの法則に従って高密度化を推進しているが、それとともにメモリ素子を微細化しなくてはならない。ところが、15~16nmよりも微細化すると、隣り合うメモリ素子が干渉(クロストーク)を起こすことが明らかになったため、2次元の微細化は断念し、縦方向にメモリ素子を積み重ねる3次元NANDを、各社が開発し製造しつつある(図2)。

東芝が世界に誇った半導体事業、中国企業が買収するのか…トランプ米大統領が妨害もの画像3

 そのようななか、16年3月末に中国のXMCという半導体メーカーが突然、240億ドルを投じて、20年までに12インチウエハで月産30万枚の規模で、3次元NANDを生産すると発表した。XMCは米スパンションから委託を受けて、NORフラッシュメモリを月産2万枚で生産している製造専門の半導体メーカー(ファンドリー)である。その後、紫光集団の傘下に入り、長江ストレージと社名を変えた(本稿では旧称のXMCを使う)。

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