「金がない・人がいない・時間がない」と頭を抱えるビジネスパーソンが増えている。そんな今こそ、弱者の戦略である「奇襲」が必要かもしれない。
そして、自社商品やサービスの良さをアピールする正攻法だけで、顧客の関心をつかむことは難しい現代だからこそ注目したいのが、「たった一言」を言い換えるという奇襲だ。
SNSなど、情報発信のツールはどんどん多様になっているが、肝心なのはやはり「言葉」だ。顧客の心をつかむには、どのような言葉で、どう情報発信をしていけばいいのだろうか。
■金を掛けずに「言葉の力」でピンチを乗り切ったタコス屋
そのヒントとなるのが、『値決めの心理作戦 儲かる一言 損する一言』(日本経済新聞出版社刊)だ。
本書では、強盗に入られて資金ショート寸前のピンチを制作費ゼロの広告で乗り切ったタコス屋の事例が紹介されている。
ラスベガスで念願のタコス屋をオープンした店主だったが、開店費用で準備資金を使い果たし、広告を打つこともままならない状況に。そんななか、深夜の店に強盗が押し入るというさらなる不幸が襲う。
ただでさえ金がないところに、現金の入ったレジを盗まれてしまったタコス屋。並の経営者なら「万事休す」とギブアップしてしまうところだ。
しかしこの店主、ピンチを逆手にとって起死回生の逆転を成功させる。彼はどんな手を使ったのか? その答えは「防犯ビデオに映った強盗たちの映像を広告ビデオに作り替える」というものだった。
「Guy wants a taco(ヤツらはタコスを食べたがっている)」というテロップが流れ、軽やかなラテン系のBGMに乗って展開されるユーモラスな広告ビデオ。このビデオはテレビでも話題となり、お店は奇跡の復活をとげた。
日本では、商品を仕入れすぎたお店が「助けてください」とお客さんに訴える広告をよく見かけるが、「ヤツらはタコスを食べたがっている」のインパクトはそれをたやすく上回る。「言葉の力」が倒産直前の経営危機を救ったわけだ。
■ソリューション営業を劇的に成功させる「たった一言」
もうひとつ、価格破壊の激しいITソリューションの営業において、言葉の選び方ひとつで売れ行きが劇的に変わる例を紹介しよう。
営業マンが、ついやってしまう失敗がある。提案システムの優秀さを強調しようとするあまり、「これまでのミスがなくなります」と、過去のミスを指摘してしまうことだ。
こう言われた担当者は、自分のミスを指摘されたかのように感じ、気を悪くしてしまう。たとえ自分のせいでなくても、過去にやった仕事のミスにはうしろめたさがつきまとうからだ。こうなると営業マンが担当者と信頼関係を築くのは難しい。
こうした事態を避けるには、その人の「がんばり」を肯定的にとらえることだ。具体的には「もっとミスが多いと思いましたが、意外に少ないですね」と言い換えるだけで相手を怒らせずにすむ。
過去の苦労を肯定しつつ、「新サービスで、その苦労から解放されますよ」と付け加えれば、相手に与える印象がぐっと良くなる。これもまた「言葉の力」だ。
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本書には「数字+心理学」をベースに、「たった一言」の言い換えによって顧客の心を掴む事例が多数紹介されている。商品やサービスの売り伸ばしに悩む、すべてのビジネスパーソンにとってヒントにあふれた一冊だ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。