2020年は新型コロナウィルスの感染拡大によって社会が一変した、そんな年だった。もちろんそれはビジネス、仕事の進め方にも大きな影響を及ぼした。
その一つが営業活動だ。「客先に訪問し、世間話をしながら相手のニーズを引き出し、商材の販売につなげていく」というやり方は、直接の面会自粛の動きによって、難しくなった。これまでの営業セオリーが封じられてしまったのだ。
働き方がリモート主体に移行する中で、打ち合わせもオンライン化が進んでいる。その中で、新たな営業セオリーを見つけなければいけない。特に中小企業は死活問題だろう。一体この逆境をどう打破どうすればいいのか?
■営業もデジタル化に移行する。そこでの勝ち筋をどう作るか?
『中小企業のDX営業マニュアル~オンライン展示会をきっかけにしたスムーズな営業改革~』(ごま書房新社刊)で展示会営業(R)コンサルタントの清永健一さんは「自前オンライン展示会」による営業の「DX」化を提唱している。
「DX」とは「デジタルトランスフォーメーション」のこと。2018年12月に経済産業省が発表した「DX推進ガイドライン」によれば、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とある。
つまり、デジタル化(IT化)によってビジネスの仕組みに変革をもたらし、より良い方向へと向かうという概念と考えていいだろう。
確かにこのコロナ禍は営業の「DX」化を進めるチャンスだ。しかし、打ち合わせをそのままオンラインにしただけは上手くいかない。アポイントを取るにはそれなりの理由が必要になるし、コミュニケーションの進め方もオンラインとオフラインでは違うものがある。
そこで、集客から商材の成約までのストーリーを「自前オンライン展示会」を使ってつくってしまおうというのが、清永さんの提唱する営業法である。
■「自前オンライン展示会」を通して攻めの営業を続けよう
では、「自前オンライン展示会」とはどういうものをいうのか。
企業が一堂に会し、それぞれの商品や事業をアピールする「展示会」は、顧客の獲得に大きな役割を果たした。コロナ禍以降はオンラインでの展示会が広まり、例えば東京ゲームショウやシーテックといった大手の展示会もオンラインで開催された。
一方で清永さんが提唱する「自前オンライン展示会」は、こうした合同展示会に乗っかるのではなく、自社でオンライン展示会のページを作り、そこで定期的に情報を提供しつつ、営業をしていくというやり方だ。その要素は2つある。
1.自社のWebサイトを実践的な営業ツールとしてつくりあげる
2.コンセプトに沿ったセミナーを定期開催し、攻め続ける
清永さんが自ら主催している「リモート営業オンライン展示会」では、リモート営業ノウハウを伝えるコンテンツが用意され、さらに過去3回にわたって行われたオンラインセミナーの動画アーカイブが掲載されている。それは、さながらお祭りのような雰囲気で、多く人が参加する展示会のあの空気を感じることができる。
◇
本書では、自前オンライン展示会のコンセプト検討や、コンテンツ作り、オンラインでのアプローチ方法などを細かく丁寧に説明している。コロナ禍で経営をどう立て直していくかが問われる中で、コストをそこまでかけず、全国から見込み客を集められる「自前オンライン展示会」の方法は起死回生の手段にもなりえるだろう。
業績を上向かせるためには、動くことが大切だ。「今は我慢の時」という考え方もありだが、打てる手があるのではあれば、それを検討しない手はないはずだ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。