タレントとしての現在の価値はおいくら?
ひとことで骨董品といっても、絵画や書、武具などアイテムはさまざま。古物を取り扱う専門家たちは、それぞれの得意分野でプロの目を利かせて商売に励んでいるわけだが、この不景気な時代にどれくらい儲かるものなのか。都内で茶道具を専門に扱うA氏(60代)に、昨今の業界動向を聞いてみることにした。
それによると、A氏の収入源は大きく分けて2つ。ひとつは「茶会コンサル」、もうひとつは「茶器の売買」だという。
茶会コンサルとは、いわばお茶会を仕切るコーディネーター。一定規模以上のお茶教室では、必ず年に2〜3回の「茶会」を開催するらしく、A氏はこれの全てをコーディネートするという。では、茶会のコンサル料を貰うのかというと、そうではない。「謝礼に数万円程度を包んでもらうことはありますが、コンサル料そのものは頂かないというのがこの業界の慣例なんです」(A氏)。では、何がA氏の儲けになるのか。
「茶会には通常100〜200人のお客が集まり、大きな茶会なら数日間で1000人以上が訪れます。茶会では茶道具を教室側が用意しますが、毎回必ず茶碗が5つとか、菓子皿が10枚とか、足りない物が出てきます。その急な注文を頂くわけです」(同)
茶会で使われる道具はどれも高価。一点につき数万円の利益を上乗せし、10点ならそれだけで50万円、60万円となることも。これが一教室で年に2〜3回行われるうえ、さらにA氏はこれ以外にも2つの教室を掛け持ちでコンサル契約しているので、コンサル収入は単純計算でこの3倍。原価は、交通費や、たまの接待などの経費を除けばほとんどが自身の手間賃なので、利益率は毎回80%近くなるという。
次に茶器の売買だが、一昔前は全国で開かれる「市」に出向き、磨きぬかれた審美眼で、価値ある器を安く買い叩き、独自のルートでコレクターや茶教室などに売っていた。まさに、我々素人がイメージするステレオタイプの古物商の姿だ。ところが、この不況で骨董品の市場価格は下がるばかり。市はどこも壊滅状態だという。
「私もバブル期は年商100億を超えましたが、今はその200分の1以下。そもそも古物業というのは、景気が悪いと絶対儲からない商売なんですよ。地方に行けば今も『市』そのものは存在していますけど、実態は古くからの関係者が集まって昔話をしているだけ(笑)。ビジネスの場としては機能していないといっていいでしょうね」(A氏)
では、A氏はどのようにして茶器の売買で利益を上げているか。意外にも、彼らの主戦場はネットオークションなのだという。
「茶器市場は今、完全にヤフオク中心なんですよ。楽天もありますけど、茶器に関してはヤフオクのほうが圧倒的に品ぞろえはいい。常時15万点以上が出品されています。不景気で高価なものが売れない半面、ネットだと売る方も素人が多いので、うまく交渉すれば安く買い叩ける」(同)