業界慣習やツールによっても変化していくのかもしれない。「海外×キャリア×ママサロン」では次のような意見もあった。
「オンラインでのコミュニケーションに慣れているかどうか(ツールの使いこなしや、気持ち的な部分も含め)は大きいと感じています。リモートというよりも、オンラインでのコミュニケーションが活発なところあるいはそれが当たり前の環境のところは、リモートワーカーがいても違和感ないですね」
「トピックと相手によって、顔が見えるスカイプ、声だけでOKな電話を使いわけています。同じ社内でも、テレカンに慣れている(日常的に日本国内でテレカンをよくしている)部門もあり、そういう部門との仕事は結構スムーズだったりします。テクノロジーがもう少し進化して、みんながリモートワークに慣れたら、リモートワークでも問題ない日がきっと来るんだと思います」
(3)孤独、ひたすら孤独
最後に、リモートワークをしている人たちは、日々孤独と戦っている。集中して作業することが必要な業種であればプラスにも転じ得るが、孤独であることは時に生産性を下げる。ちょっとしたアイデアが浮かんだそのときに、人の意見を聞いてみる、人の知識を借りて考える、ということができないからだ。
「(完全に自宅をリモートワークのオフィスにしていると)例えば通勤中とか街中を歩いて受動的に得ていた情報にタッチできなくなる。オンラインで得る情報は、能動的にあつまる情報がほとんどで、偶然見たこと聞いたこと会った人からアイデアが浮かぶみたいなことが少なくなると感じます」
「海外在住ですが、最近シェアオフィスを探しています。また、現地のエージェントやNGOとの仕事をしたりネットワークを増やしたりすることで、なぜ私はここから日本の仕事をしているのだ? と自問しなくてすむようにしています」
解決策は、現地でコミュニケーションを作る、ネットワーキングをするということになるのだろう。完全にリモートということでも、世界のどこにいてもまったく変わらないということではなく、むしろその場所独自の情報を生かす方向にシフトするほうが付加価値も産みやすいかもしれない。
(4)時差がきつい
このほか、欧米などの時差が大きい海外リモート組からは次のような声があがっていた。
「時差ですね。深夜のコールはなるべく出ないよう上司が配慮してくれていますが、アメリカ、日本、ヨーロッパでコールするときなど、ごくまれにですが、どうしても深夜になってしまう時も。また、夜メールを送って、朝日本から返事が来ているので、なんとなく夜も気持ちが落ち着きません」
「海外メンバーとリモートしている知人は、時差の問題で夜中のweb会議が多くなってしまい、かといって日中業務がないわけではないので、かなりブラックな働き方になると嘆いてました」
まだ、「世界のどこにいても同じように働ける未来」まではもう一工夫必要なようだ。とはいえ、東京一極集中と、それに伴う待機児童や通勤ラッシュなどの課題にリモートワークは大きな可能性を秘める。会議ツールなども各種登場し進化しており、より空気が読め、初対面でも違和感がなく、孤独も感じにくいような技術も早晩実現するのではないかと期待する。
(文=中野円佳/ジャーナリスト、オンラインサロン「海外×キャリア×ママサロン」主宰)
1984年生まれ。東京大学教育学部を卒業後、日本経済新聞社に入社。大企業の財務や経営、厚生労働政策を取材。育休中に立命館大学大学院先端総合学術研究科に通い、同研究科に提出した修士論文をもとに2014年9月『「育休世代」のジレンマ』を出版。2015年4月より、株式会社チェンジウェーブを経て、フリージャーナリスト。厚生労働省「働き方の未来2035懇談会」、経済産業省「競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ2.0)の在り方に関する検討会」「雇用関係によらない働き方に関する研究会」委員を務めた。現在シンガポール在住、2児の母。女性のスピークアップを支援するカエルチカラ言語化塾、海外で子育てとキャリアを模索する海外×キャリア×ママサロンを運営。東京大学大学院教育学研究科博士課程。