人はいくつになったら「大人」になったと言えるのか。二十歳で成人式を迎えたら?
働き始めて自立したら? 結婚して家族を築いたら? もしかしたら、どんな年代、人生のどんなステージでも、自分のどこかに「大人になりきれていない」感覚は残るのかもしれない。
■イライラした態度で周囲を困らせる50代に必要なこと
それなりに人生経験を積んだ50代になってもイライラし、不機嫌になって、周囲を困らせたり、心配させたりする人もいる。そのまま還暦を迎えないためにも、そろそろ「円熟した大人」になりたいもの。「円熟」というのは、技術や能力が上達して熟した「成熟」に、ワンランク上の「人格」が加わったものだ。50代のうちから準備をし、円熟した60代を迎えるにはどうしたらいいのか。
そのために読んでおきたいのが『60歳からの生き方哲学 円熟した大人の作り方』(齋藤孝著、笠間書院刊)だ。
本書では、明治大学文学部教授の齋藤孝氏が、50代にむけて「シフトチェンジ力」「身体感覚力」「上機嫌力」「大人のコミュニケーション力」「美意識力」「孤独力」といった円熟した大人になるために必要な力を紹介する。
いつもイライラ、カリカリして場の空気を淀ませる不機嫌なシニアは嫌われる。周りにそんな人はいないだろうか。なによりも、自分自身がイライラしている不機嫌なシニアになってはいないだろうか。
まずはその理由から考えなければならない。なぜ、シニアは不機嫌になってしまうのか。その理由は、2つ考えられる。1つ目は、「自分の能力がないことを皆から隠したい」という自己防衛本能があること。2つ目は、「いつも機嫌がいいと人から馬鹿に見られはしないか、深刻ぶったほうが賢く見えるのではないか」という歪んだ認識。不機嫌な人ほど、知性のパフォーマンスは低めだということを理解しておかなければならない。
60代から必要なのは、「上機嫌力」だ。機嫌とは気分のことで、変えようがない性格とはちがって誰でも意識さえすれば、身につけることができる。というのは、上機嫌も不機嫌も気分だが、上機嫌は「意思」寄りで、不機嫌は「感情」寄りに属するのだそう。
上機嫌は、礼儀であり、大人の義務でもある。60代でぜひとも身につけておきたいが、どうしたらいいのか。不機嫌から上機嫌への改善には「意識の持ち方」が重要となる。そのためには「ふっきる」こと。自分の中の「負の力」を振り切り、吐き出し、払拭する。しがらみや執着を捨ててしまうのだ。
そして、不機嫌から上機嫌への転換で大事なのが、「思い込み」から「想像力」への転換だ。想像力は、確固たる意思を出発点とし、方向性がしっかり定まって能動的なもの。困難な状況にも想像力を駆使して工夫し、それを乗り越え、未来に向かってふっきっていく。上機嫌な人はそうやって、想像力で不機嫌をふっきり、上機嫌を引き寄せるのだ。
大人になりきれていない大人にならないためにも、50代のうちから「円熟した大人」になる準備をしておくべきだろう。60代からの人生を心身ともに豊かに過ごすためにも、本書を活用してみてはどうだろう。
(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。