ウサギのお母さんは赤ちゃんを生むと、「家出」をするそうだ。他の動物に赤ちゃんが見つからないように、自分の毛で暖かい巣を作り、そこに移り住むという。
動物の生態は、人間からすると不思議で面白いことばかり。そんな動物たちの心温まるエピソードの数々を紹介するのが『どうぶつおやこ図鑑』(マヤ・セーヴストロム著、井上舞訳、化学同人刊)だ。
■厳しすぎる自然の摂理…動物たちの妊娠・出産がハードモードすぎる
弱肉強食は動物の世界の常。生まれたばかりの赤ちゃんであっても、すでに弱肉強食の世界で生きることになる動物もいる。「シロワニ」というサメは卵ではなく、赤ちゃんのサメを生む。一度に2匹の赤ちゃんを生み、お母さんの中で兄弟を食べてしまう。そうして、一番強い赤ちゃんだけが生き残る。
タスマニアデビルの赤ちゃんたちも、生まれてすぐに生き残りの競争をする。一度に20匹から30匹生まれる赤ちゃんたちは、4つしかないお母さんの乳を目指す。先にたどり着いた4匹だけが大きくなれるのだ。
タスマニアデビルは、カンガルーやコアラと同じ有袋類で、お腹に赤ちゃんを育てる袋を持っている。米粒くらいの大きさで生まれた赤ちゃんは、お母さんの乳にたどり着けた4匹だけが、お腹の袋の中で数ヶ月かけて成長し、十分に大きくなってから外の世界に出ることになる。
動物の親たちの卵や赤ちゃんの温め方も様々でおもしろい。ナイルワニは、砂が積もったところに穴を掘って卵を埋める。赤ちゃんが卵からかえる約3ヶ月間、親がそばにいて見守る。ちなみに、卵の周りの砂の温度によって、赤ちゃんがオスになるかメスになるか決まるのだという。温度が高い、低いとメス。普通だとオス。赤ちゃんが生まれる頃になると、卵の中から声を出して、親に知らせ、その声が聞こえたら、親は卵を掘り返す。
冬になると、コウテイペンギンが集まってみんなで一緒に子育てをする。親ペンギンには足の上のところにポケットがあり、赤ちゃんペンギンはそのポケットにもぐって寒さから身を守る。赤ちゃんペンギンは他の方法でも体を温める。赤ちゃんペンギンたちがくっついて、大きなグループを作り、温め合うのだ。さらに、真ん中にいる赤ちゃんが温まりすぎないように、おしくらまんじゅうをしながら、少しずつ動いて、場所を交代しながら、まんべんなく温め合うのだ。
本書は様々な動物たちの妊娠や出産、育児の中での不思議で魅力的なエピソードや家族愛を、スウェーデンのアーティスト、マヤ・セーヴストロム氏によるどうぶつおやこのイラストと共に、動物の生態を楽しみながら読むことができる。
赤ちゃんがどう生まれ、その後どのように育てられるのか。動物によって本当にそれぞれで面白い。動物たちの家族愛や不思議な生態にほっこりと心温まるはずだ。
(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。