「マネジャーとして会社をリードしてほしい」。そう言われ、晴れて昇進。しかし、会社からの期待を受けて頑張ってはいるが、「自分は本当にマネジャーに向いているんだろうか?」「マネジャーって一体何をすればいいんだ?」と、悩んでいる新米マネジャーは少なくないのではないか。
実務担当者(プレーヤー)としてバリバリ仕事をこなしていたものの、マネジャーになると躓いてしまう人は少なくない。それはそうだ。プレイヤーとマネジャーの仕事の性質はまったく違うのだから。プレイヤーの気持ちでマネジャーになると上手くいかなくなる。
では、新米マネジャーはどのように「マネジャー」となっていくのだろうか。
『増補版 駆け出しマネジャーの成長論』(中央公論新社刊)は、立教大学経営学部教授の中原淳さんによる「マネジャー入門書」というべき一冊だ。新任マネジャーとなって右も左も分からない人にとっては大いに力になる。
では、そもそも「マネジャー」とは一体何をする人なのか?
■「マネジャー」になって求められる意識の転換
マネジャーになってまず変えないといけないのが仕事との向き合い方だ。これまでは自分の力で状況を打開し、パフォーマンスを上げてきた。そのパフォーマンスがプレイヤーとしての成果につながっていたわけである。
しかし、マネジャーになると、原則として「自分ではタスクを追わない」「自分では動いてはいけない」という意識の転換が必要になる。そう、自分が動かずに、他者を通して成果を上げていくことが求められるのだ。ちなみに、ここでいう「他者」は部下だけではない。同僚、上司や他の部門長、さらには経営者といった人たちのことも当てはまる。
「自ら動かない」ということは慣れないとなかなか難しいだろう。しかし、「自分は動かず、他者を動かし、物事を成し遂げること」こそがマネジャーの役割であり本質なのだ。
■「他者を動かす」ためのマネジャーの仕事とは?
では、マネジャーが実務担当者からの移行において乗り越えなければいけない課題は一体何があるのか。中原氏は7つ挙げている。
(1)部下育成
(2)目標咀嚼
(3)政治交渉
(4)多様な人材活用
(5)意思決定
(6)マインド維持
(7)プレマネバランス
もちろん、すべての課題を背負い込むわけではないが、マネジャーになるプロセスの中で遭遇する率の高いものたちである。
たとえば「部下育成」。マネジャーにとって当たり前の仕事と考える人も多いだろうが、最初から育成の原理を知っていることはそう多くない。自分が上司から受けてきた追い詰め型教育を再生産してしまい、チームに悪影響を与えてしまうということもありえる。
中原氏は部下育成の原理について、「リスクをとって部下に仕事を任せ、適切なタイミングでフィードバックすること」と述べている。そのリスクは能力より少し高めの仕事を割り振ることで生じる。そういう仕事を部下に任せつつ、振り返りを促しながら、能力を向上させていくことが原理にのっとった部下の育て方になるのだ。
◇
この7つの挑戦課題を軸に、マネジャーとして成長していくための方法が書かれている本書。社会が激変し、一時代前よりマネジメントが難しくなっているのは確かだろう。苦しいこと、悩んでしまうこと、迷うこと、さまざまなことが降りかかってくるはずだ。ただ、その道は他のマネジャーも歩いていたりする。
本書ではさまざまなマネジャーの先輩たちが登場し、どんな経験をしてきたのか、どう乗り越えたのかが書かれている。その中にあなたが抱えている悩みの解決策が見つかるかもしれない。悩み多きマネジャーは一読する価値のある一冊だ。
(金井元貴/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。