2021年5月2日に放送されたドキュメント番組『情熱大陸』(TBS)に出演した動物彫刻家のはしもとみお氏。同番組内では、全国的な人気を博した秋田犬「わさお」のモニュメント制作の様子が放送された。実際の動物と直接向き合って創作するスタイルのはしもと氏が、すでに亡くなっているわさおの写真などから見事に創作していく姿は圧巻であった。
そんなはしもと氏は、著書『はじめての 木彫りどうぶつ手習い帖』(はしもとみお著、雷鳥社刊)で作品創作の思いから、作品の作り方の基本までを明かしている。
■『情熱大陸』出演の動物彫刻家による「創作のキモ」
本書では、「ねこのブローチ」「子どもペンギン」「ねむるねこ」「ブランコにのったくま」「小さいロバ」を教材に、下描き、木取り、粗取り、面取り、仕上げ、彩色、加工まで、順を追って制作過程やポイントを紹介する。
はしもと氏が彫刻を作るために一番大切にしている工程がスケッチだ。うまく描くためではなく、自分の目の前にいる生き物を出会った第一印象通りにとらえるためのスケッチ。描くことはよく見ることにつながる。どんな表情をしているか、などをよく観察することで、どんな瞬間を作りたいかを決め、創作のイメージをふくらませるのだ。
また、大切なのは技術的なことだけでない。どのような思いを込め、どんな心持ちで創作すると、見る人を感動させる力を持った彫刻へとなるのか、という創作のキモになる部分も解説されている。
近所の猫や飼っている、飼っていた動物を自分で絵を描き、木を彫って何かを作る勉強をしていくうちに、それらがどれほど美しく、素材がどれほど大切なものか、肌で感じられるようになった。ものを作るということは、ものの美しさを学ぶこと。私たちはありとあらゆる美しいものに囲まれて暮らしていると、気づけたことが、はしもと氏が美術を学び、創作をしてよかったことであるとはしもと氏は述べる。
木彫り彫刻の最初の教科書となると共に、はしもとみお氏の作品もきれいな写真と共に多数掲載。作品集としても楽しめる。楽しみながら、彫刻に挑戦してみてはどうだろう。『情熱大陸』やインターネットなどではしもと氏の作品を見て、興味を持ち、動物彫刻に挑戦してみたい、と思った人に、最初に手に取ってもらいたい1冊だ。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。