道を歩いているとき、建物や道路の工事などで三脚とカメラのような器具を使っている作業員を見かけたことはないだろうか。実は彼らは「トータルステーション」という測量機器を使って距離や角度を測量している。
「測量」と聞くと、200年前に全国を歩き回り日本地図を作った伊能忠敬の名前を思い出すくらいで、多くの人はそんなにピンと来ないだろう。
しかし、実はこの測量は、私の日常生活にとても身近であり、私たちの生活を支えていると言っても過言ではないのだ。
■こんなところにも「測量」の影響が!
たとえば、家を建てる際には、まず測量から始まる。敷地の測量を行い、土地がどのような形と大きさで、どういう向きになっているのかを測るのだ。その結果をもとに、建物が設計される。マイホームの第一歩は測量なのである。
また、災害対策に欠かせない「ハザードマップ」も正しい測量があってのものだ。他にも、方向音痴の人の御守りであるスマホの地図のナビ機能も測量のおかげである。
何より「メートル」という長さの単位も、測量の結果に基づいたものだ。1メートルの長さが決まる経緯は紆余曲折あり、プロジェクトが展開されたのはフランス革命にゆれる18世紀末のこと。子午線(南極と北極を結ぶ線。赤道と直角に交差する)の長さの4000万分の1を「1メートル」と定義したのが始まりだ。その後、定義は何度か変更されているが、基本的には同じ長さである。
ニッチな世界だと思われがちだが、案外身近で面白いのが「測量」。そんな測量について、マンガを交えて分かりやすく説明してくれる入門書が『よくわかる測量』(海津優著、ユーキャン刊)だ。
ここまで説明してきたような「日常の中にある測量」は、この本の中で多数紹介されている。一つ一つ掘り下げていくと、より奥深い世界を知ることができるだろう。
■測量の「基準」、三角点を探しに出かけよう
測量の成果の最たるものは、何といっても「地図」だ。
地図には、縦と横に線が格子状に引かれている。これは皆さんもご存知であろう「緯度」「経度」を示す線だが、これがいわば地球上の位置を示すための「共通の基準」。この基準があるからこそ、自分がいる位置を座標で表すことができるし、これから向かおうとしている目的の場所や距離も把握することができる。
もちろん、実際に地面を見ても線は引かれていない。そんな中で自分の位置を把握するためにはどうすればいいのか。それは「基準点」を見つけることだ。
その一つである「三角点」は、国土地理院が作った緯度・経度・標高の基準になる点で、1等級から4等級まであり、全国で109137点(2021年4月1日現在)設置されているという。高い山の上に置かれていることが多いが、街中にもある。その大きさは100円硬貨よりも一回り大きいくらいなので、なかなか気づくことはできないだろう。
あなたが住んでいる場所の近くにも、探してみると三角点が見つかるかもしれない。国土地理院のホームページには「基準点成果等閲覧サービス」というページがあり、そこかで日本全国のさまざまな基準点が検索でき、三角点を選んで位置や情報を確認することができる。
ステイホームのご時世だが、散歩がてら家の近くの三角点を見つけに行ったりするのも良い気分転換になるかもしれない。これも測量の世界を楽しむ一つの方法だろう。
マンガと図解で測量の世界を教えてくれる本書は、専門の知識が全くなくても読むことができる。地図が好きだったり、地学に興味があるならば、なおさら面白く感じるはずだ。
また、もちろん測量を学んでいる人や、測量士や測量士補の資格取得を目指している人にとっても勉強になる。まさに知的好奇心をくすぐる一冊である。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。