企業にとって「人手不足」はすぐに解決すべき問題の一つ。しかし、手を打ってもなかなか人が集まらない、もしくは人が定着しないと悩む経営者も少なくない。
今や企業の労働環境はインターネットなどを通じて情報がすぐに広がる。検索を通して自社の評判をチェックすると、社内外からどんな風に見られているのかが分かるだろう。そして、ブラックな環境であれば当然叩かれるし、人材は寄りつかなくなる。その、一方で人が集まる会社には良い人材が集まるというスパイラルも生まれている。
では、「人が集まる企業」と「人が逃げ出す企業」の差はどこに生まれるのか?
就業規則をテーマにした著作を複数持つ社会保険労務士の下田直人氏は『人が集まる会社 人が逃げ出す会社』(講談社刊)でその差を説明している。ここでは本書から人が逃げ出す「負の連鎖」に陥る会社の特徴をまとめてみよう。
■「人の心を冷やす会社」の特徴3つとは?
下田氏は本書の冒頭で、人が集まる会社と逃げ出す会社の差について「温める」「冷やす」という温度の表現を使って説明をする。つまり、人が集まる会社は「人の心を温める会社」であり、逆に逃げ出したくなる、近寄りたくなくなる会社は「人の心を冷やす会社」となる。
そして、後者の「冷やす会社」の特徴として以下の3つがあげられている。
・人をすぐに使えるか使えないかで判断する
・やたらとペナルティを科そうとする
・本来の目的を見失い、手段が目的となってしまっている
(p.42より引用)
「働き方改革」が進められる中で、特によく見られるのが「手段が目的となる」ケースだ。働き方改革の大きな目的は経済成長であり、長期的に生活を豊かにすることだろう。そこに向かう手段として「生産性の向上」があり、長時間労働の削減などは現場レベルの手段がある。
ところが、現場ではその「手段」が至上命題となり、逆に現場の管理職や社員を苦しめることになっている。本書では「長時間労働の削減」が目的化し、現場の部長と社員の間であつれきが生じてしまうケースが例にあげられているが、他人事ではない会社も多いのではないか。
下田氏は「日本人の気質なのか、この国では、ひとつの方向に流れ出すと極端にそちらに偏る傾向がある」と指摘する。
では、こういう状況にならないようにするために経営者は何をするべきなのだろうか。そして、人の心を温める会社に変わっていくにはどうすればいいのだろうか。本書では下田氏がさまざまな具体例を取り上げながら、その術を教えてくれる。
一つ言えるのは、本書にも書かれているように「冷やす会社」は経営者もストレスフルであるということ。もし会社が「冷やす会社」になっているならば、負の連鎖を断ち切るに何をすべきか考えるべきだろう。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。