今、ある伝説的な経営者が執筆したビジネス書が復刊し、大きな話題を呼んでいる。
その経営者の名は藤田田。「ふじた・でん」と読む。
1926年大阪に生まれ、東京大学に進学後、輸入雑貨販売店「藤田商店」を創業。1971年にフランチャイズ権を獲得し、日本マクドナルドを設立する。さらに1989年には玩具量販店の日本トイザらスを設立し、2004年に死去した。
その代表著作として知られるのが82万部を超えるベストセラー『ユダヤの商法 世界経済を動かす』だ。1972年に出版され、その後長らく絶版となり中古本市場において高い価格で取引されてきた。
そんな本書が2019年4月、KKベストセラーズより新装版として復刊したのだ。
「銀座のユダヤ人」という異名を持っていた藤田。彼はユダヤ人のビジネスマンたちに学んだのはユダヤ商法の定石だった。その定石さえ守れば、金儲けは誰でもできる。そんなことを本書の中で語っているのだ。
巻末に掲載されている「藤田田復刊プロジェクトチーム」によるメッセージの中には、社会環境が劇的に変化した厳しい時代においても、勝ち抜くための「答え」が藤田の商法の中に色あせることなく豊かに「ある」と指摘する。
読み進めていくと、「これは今の時代の価値観にはそぐわないのではないか」という考え方もあるが、確かにビジネス、金儲けというところでは現在でも「定石」と言えるものがたくさん詰まっているし、ページ全体を通して伝わる「がめつさ」「ハングリーさ」は成功のための必須要素になるはずだ。
では、そのユダヤ商法の定石とはどんなものがあるのだろうか。少しだけ紹介しよう。
■ユダヤ商法には商品はふたつしかない
20年近い貿易商生活の中で、ユダヤ人から何度も言われたことが「ユダヤ商法に商品はふたつしかない。それは女と口である」という言葉だったという。
その理由はこうだ。男性がお金を稼ぎ、女性がそのお金を使って生活を成り立たせる。つまり、男性はお金を持っていない。もっとはっきり言えばお金を消費する権限がない。儲けたいならば、お金を持っている女性をターゲットとすべき、ということなのだ。
ただ、女性用品は儲けやすいとはいえ、扱うにはある程度の才能が必要。そこで出てくるのがもう一つの商品「口」である。「口に入れるものを取り扱う商品」――いうなれば「グルメ」だろうか。藤田は、凡人でも、凡人以下の才能しかない人でもできる商売だと言う。
なぜか。それは口に入ったものは、必ず消化され、時間が経てば廃棄物になる。そしてまた新しく食べるものが必要になる。「こんな商品ほかには存在しない」と藤田は述べる。
とはいっても、口に入れる商品は、女性用品ほどたやすく儲けることはむずかしい。というところで、第一の商品が「女性用品」、第二の商品が「口に入れる商品」となっているようだ。
■ユダヤ人は自信のある商品を「まけない」
ユダヤ商人たちの特徴をもう一つ。
彼らは自信のある品物を決してまけることはない。この商品を高く売ることがいかに正当であるかをあらゆる資料を用いて説明しようとする。 そして、高く売るためのデータ・資料を送り付け、「これで消費者を教育しなさい」と言うのだ。
商品をまけなければ、もちろん利益は大きくなる。商品に対する自信、それが日本人には少ないのかもしれない。
藤田の半生を挟みつつ、ユダヤ商人たちの商売哲学がつづられている本書。「働くために食うな、食うために働け」「百点満点で60点とれば合格」といった考え方や、「金儲けのできん奴はアホで低能や」「金を持っても、デカイ面するな」といった藤田の厳しい語録も収録されており、とことん刺激的である。
この世の原理原則はそう変わりはしない。多くの経営者に影響を与え続ける実業家の言葉は、ビジネスで成功をしたい人にとって参考になる部分がたくさんあるはずだ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。