「思いやりの心」である共感力は、状況に応じてうまく発揮することで、人間関係が円滑に回るだけでなく、自分自身の心にも強さを培ってくれる。そしてこの力は生まれついての才能ではなく、意識的に自分で伸ばせるスキルだという。
そんな共感力について、心と脳の研究をしているスタンフォード大学心理学准教授のジャミール・ザキ氏が解説する授業を1冊にまとめたのが『スタンフォード大学の共感の授業』(ジャミール・ザキ著、上原裕美子訳、ダイヤモンド社刊)だ。分断、不寛容な時代を生き抜くために、他者への共感能力は必須だろう。その意味では極めて現代的な一冊だ。
分断・不寛容な時代の必須能力「共感力」の伸ばし方
共感力を効果的に伸ばすには、どんな方法があるのか。
「あなたはもっと成長できる人間です」「もっと賢く、もっとオープンにな心を持ち、もっと共感力を持つことができます」と教えられると、人はとりあえず目先のことに対して、前よりも努力するようになる。壁にぶつかっても粘り強く取り組み、自分にはこんな強さがあったと気づくことができる。さらに、自分自身を信じて行動したことで、ますます自分を信じる理由が増える。こうして思考回路の癖が長期的に定着し、共感力が伸び、持続するという。
ただ、そもそも共感力はどのように測定するのか。社会科学という学問は、曖昧に見えるテーマをより明確なものに変えていく試み。科学者たちはさまざまな手法を使って、共感力の厳密な測定を行っている。
ジャミール・ザキ氏の研究では、3つのアプローチに主眼を置いている。1つ目は、他人の感情を読み取る脳の活動や人格的特性の測定。2つ目は、共感するという体験と相手を助けたいという意欲との関係性の検証。3つ目は、共感されることによって、人間関係のクオリティにどんな影響があるか調べること。複雑でもあり、魅力的でもある共感には科学的に探求すべき理由がそろっているとジャミール・ザキ氏は述べる。
共感力は誰でも発揮でき、伸ばすことができるスキル。本書から共感力とはどんなスキルなのか、どうやって伸ばすのかを学び、人間関係の構築や仕事に活かしてはどうだろう。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。