「毎日、最大150種もの生きものたちが、この地球から姿を消している」というのは、2007年の国際連合の生物多様性条約事務局による発表だ。2007年以降も絶滅の速度は加速し続け、現在も生きものは減り続けている。
地球では過去に5度、生き物たちが絶滅した時期がある。そして今、6度目の大絶滅が起きつつあると研究者たちは言っている。ただ、今直面している6度目の大絶滅は、過去の大絶滅と大きく異なる。過去の大絶滅は地質学的な原因によって引き起こされたのに対して、今回の大絶滅は人間が引き起こそうとしているのだ。
■地球は人間によって滅ぶ?「6度目の絶滅」はどう起こるのか
生きものたちは「食う、食われる」「寄生や共生をする」「食べ物やすみかを奪い合ったり、提供したりする」など、互いに関係し合って生きている。多くの生きものが姿を消し、彼らがつないできた「生きものの輪」が地球規模で壊れつつある。もちろん、人間も地球上の生きものたちの一員として、他の多くの生きものがつくる「生きものの輪」に支えながら生きている。人間の未来を考える上でも避けては通れない課題なのだ。
『大絶滅はまた起きるのか?』(高橋瑞樹著、岩波書店刊)では、サンショウウオを専門に研究している生物学者の高橋瑞樹氏が、絶滅とは何かを考え、絶滅にも種類があることや過去に起きた大絶滅について解説する。
沖縄県石垣島と西表島の間には石西礁湖と呼ばれる日本最大の珊瑚礁が広がっている。しかし、1998年から急激にその石西礁湖の白化が進み出している。環境省那覇自然環境事務所の2016年の調査報告によると、平均白化率は97%にもなる。
サンゴの白化現象のおもな原因は、地球温暖化による海水温の上昇だ。海水温が上昇すると、サンゴと共生している藻類がストレス状態になって珊瑚から離れていく。珊瑚はこの共生藻類を体にすませるかわりに、藻類が光合成をしてつくる栄養素をもらって生きている。なので、藻類が離れてしまうと、栄養を得られず、白くなって死んでしまうのだ。サンゴ礁が機能しなくなると、魚も減る。これは海の幸を生活の糧にしている人にとっても死活問題となる。
海の温暖化の進行の影響は、海洋全体に広がっている。カナダのブリティッシュ・コロンビア大学の研究者たちの研究によると、2050年までにある海域にすむ生きものたちの構成は、現在と比較して60%変わってしまうと予想している。温暖化で絶滅する種がいたり、新たな生息場所を求めて出て行ったり、新たに入ってくる種がいるからだ。
今、地球でどんなことが起きているのか。未来はどうなるのか。本書から6度目の大絶滅の現状を知り、生きものの絶滅の問題について考えてみてはどうだろう。(T・N/新刊JP編集部)