仕事や勉強に一生懸命励む人は多い一方で、「結果」となると誰でも手にできるものではない。もしかしたら、結果の良しあしは「一生懸命さ」とはあまり関係がないか、一生懸命さだけでは足りないか、どちらかだ。
しかし、人は「一生懸命」にしがみつく。懸命に物事に取り組む姿は、それはそれで周囲からの評価の対象になるからである。しかし、結果が出ないのは何かが間違っているからで、その何かをつきとめないことには、その姿勢は身を結ばないのだが、姿勢が評価されているうちはそこに考えがなかなか及ばない。一生懸命はある種の「ぬるま湯」なのである。
「未完了」をなくせばエネルギーが湧いてくる
『降伏論 「できない自分」を受け入れる』(高森勇旗著、日経BP刊)はこの点を鋭く指摘し、成果の出る努力をするための考え方を教えてくれる。本書によると、いい結果を出すには、自分自身を「いい結果を出せる状態」にしなければならないという。
いい結果を出せる状態とは、自分の中に「未完了」がない状態のこと。たとえば、朝仕事に出かける前に起きたちょっとした夫婦喧嘩や、「今度飲もうよ」といったきり開かれていない飲み会、貸したまま返ってきていないお金……。
普段意識していなくても、これらは心のなかのしこりとなって人からエネルギーや集中力を奪う。「未完了」が多く残っているほど、その足枷は重くなるのである。成果を出すためには、未完了を減らし、自分の心と体を軽くする必要がある。
自分を振り返ってみると、こうした小さな心残りや気がかりが無数にあるはず。これらを減らしていくこと、そして未完了を作らない習慣をつけることで「いい結果を出せる状態」ができていく。
結果が出ない意思決定を何度繰り返しても結果は出ない
しかし、これだけではまだ足りない。今の自分を作り上げたのは、日々の膨大な意思決定の結果である。つまり、「いい結果が出ない意思決定」を積み重ねてきたからこそ「いい結果が出ない自分」がいるのである。ならば、自分の意思決定の基準を見直さないことには、いつまでも一生懸命なだけの自分が残ることになる。
しかし、これまでの人生で染みついてきた意思決定の基準を変えるのは容易なことではない。だからこそ、ある程度「こんな時はこうする」という自動的かつ強制的な仕組みが必要になってくる。
たとえば、2つの選択肢がある場合、これまでの自分なら選ばなかった方の選択肢や、抵抗感がある選択肢、初めての選択肢をあえて選んでみる、というのは一つの方法だ。あるいは、人からアドバイスをもらったら、あえて検討することなく採り入れてみるのもいいかもしれない。検討することとは、イコールこれまでの自分の価値観と照らし合わせるということに他ならないからである。
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結果が出ない自分のままいくら一生懸命やっても、やはり結果は出ないもの。プロ野球選手として芽が出ないまま引退し、ビジネスの世界で成功を収めた著者の言葉には、経験に裏打ちされた重みがある。
自分を変えるのは誰もが怖い。しかし、その先にしか努力が実を結ぶ未来はないのである。結果が出ずにもがいている人は、本書が殻を破るきっかけになるかもしれない。今の自分を客観視し、何が足りないのかを考えるのに最適な一冊だ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。